2007/04/24
和辻哲郎『イタリア古寺巡礼』
有名な日本での『古寺巡礼』は未だに未読なのだけれど、このイタリア版のほうをとりあえず読んでみた。時が昭和初年の頃ということで、当然ながらその時代の雰囲気がなかなか興味深い。ムッソリーニも登場するが、決して否定的な評価をされているわけでもなかったりしている。そんな時代雰囲気の中で、要するにこの一冊の本は旅行記である。昭和初期の、まだ人々がそんなに簡単には渡欧などできなかったであろう時代のイタリアを、三ヶ月ほどかけて旅した手記である。
博学な和辻哲郎も、とは言えイタリア文化の専門家というわけでもなかったろうし、文章中でも対象となるイタリア文化に対してそれほど専門的な分析が加えられるというわけでもない。だが、和辻ならではの鋭い観察眼に時代特有の雰囲気も加わり、なかなか楽しめる旅行記となっている。
ところでこの本でも再三のように触れられているのだが、日本とイタリア、もしくは東洋と西洋の文化的な違いということにどうしても意識が行ってしまう。そして、この本でいくつか指摘されているようなことも、それぞれに正しい。いわく、西洋と東洋における自然への考え方の違い(西洋において「自然は人間に従属すべきもの」である)、あるいは西洋が持っている「公共的なものに対する感覚」、あるいは西洋の庭園に代表されるようなその美の「幾何学」性――。どの指摘もそのとおりだと思う。
ただ内容が間違っているわけでもないが、この手の比較文化論的な日本論は(その後、類似のものが百出したということもあるだろうが)、いささか食傷気味だ。確かに日本的な美意識もあり、一方で西洋的な美意識もある。目下の関心は、その二つを本当に繋ぐことはできないのか、ということ。二つを並べてその相違点を論うのにはもう飽きた。もっと実際的なことをしばらく考えてみたいと思うのだが。







