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2007/06/26

コクーン歌舞伎 三人吉三

 平日とはいえ、かなりいい席がとれたので前々から楽しみにしていた公演。しかし、コクーン椅子席最前列は、噂どおり、関係者の知り合いばかり。隣に津川雅彦、少し置いて野球の古田、他に大竹しのぶなども客席にいたようだが気がつかず。分不相応な席という感じで落ち着かない。
 さて、肝心のお芝居だが、もともと複雑な話とはいえ、一幕目はごちゃごちゃしていてかなりバランスが悪い。いろいろとばら撒かれた伏線は二幕目への布石の幕とも言えるが、それにしたって、ややこしい。通常の半通しのように、大川端からはじめた方がわかりやすくていい気もするが、新しい試みをしつつ、古い芝居の形態を再現するというのも、コクーン歌舞伎の打ち出した形ではある。一部では、加役で勘三郎が金貸しの役を勤めているが、明るく愛嬌のある勘三郎を勘三郎ファンのお客さんに見せておこうということだろうが、この役は要らない気がする。
 一幕目で出色のできは、おとせ(七之助)と十三郎(勘太郎)の悲恋カップルの出会いの場面。川面に白粉の白さが反射するような輝きを放つ、照明の使い方も、いいのだが、先に続く悲劇を予想させる二人の出会いの場は切なくも美しい。こんな濃ゆい七之助は、はじめてみた。
 歌舞伎屈指の名台詞を聞かせる大川端の場は、黙阿弥の七五調のセリフを美しく響かせつつ、決してセリフの音楽に流されすぎず、意味を持つセリフとして伝えなければならないというさじ加減の難しいところ。今回のお嬢吉三は、ほぼ謡わずにセリフとして処理した前回見た玉三郎に比べ、謡いつつも、セリフとして伝える部分をよく計算して、セリフを言っている。ちょっと、ぎこちなさをかんじなくもない。声のギアチェンジしている部分のつなぎ目がみえる。今回のお嬢吉三は、福助のはまり役だと思うけど、いまから10年以上前に見た、勘九郎(勘三郎)のお嬢吉三が私が見たうちではベスト。最近、真女形が演じることの増えているお嬢だけれども、兼ねる役者のお嬢がもっと見たい。
 笹野さんの伝吉だが、ちょっと評価の難しいところ。例えば、普通にキャスティングするんだったら、この役は今回出演していない弥十郎(字が違うが)のものだろう。笹野さんの普通の演技は、江戸の暗黒街のおどろおどろしいリアリティを伝えてよいのだが、長いモノローグでは歌舞伎役者とは違い、セリフの音楽に頼るわけにはいかないので、聞いているこちらがしんどくなる。やはりここでも、お嬢吉三の大川端でのセリフ同様、セリフを一部音楽として伝えるか、意味のあるメッセージとして伝えるかの問題だ。いっそのこと割り切って、笹野伝吉のセリフだけ、書き直してしまったらどうか?長セリフには椎名林檎のエレキギターのインストが被さる。エレキはコクーンなら結構合うとは思うが、たいして新鮮さはないな。
 一幕の勘三郎、身長の問題もあるが、三人を束ねる兄貴分としての格が不足しているように感じる。ただ、他の二人に比べて格段にセリフが届きやすいのは、歌舞伎以外の芝居でも活躍しているからだろう。
 お坊VS伝吉の場面は、通常歌舞伎で見ているのとでは、大きく異なる。伝吉に本気でびびるお坊なんてのは、はじめてみた。普通、歌舞伎では、ジジイがいきがっても無駄という感じにお坊にあっさり殺されるのだが、今回はかなり伝吉が頑張る。 ここは、演出家の串田さんも、あっさり殺されるのも笹野さんに悪いということで、花を持たせたのだろうか。

 と、書いているうちにやたらと長くなってしまった。このお芝居は二幕目の吉祥院の場が非常に濃厚で素晴らしかった。勘三郎も、一幕目ではイマイチ冴えなかったが、この幕では演技の気迫が全然違った。通常演じられている、二人の兄妹が墓場で殺される場面が省略されていたが、舞台の張り詰めた空気を持続させる為という点では、意味がある演出だったと思う。
 お坊とお嬢がまたいい。この場面、玉三郎と仁左衛門が演じたときはまんま男女の心中のようになっていたのだが、橋之助お坊と福助お嬢は、袋小路に追い詰められた、寄る辺ない少年二人の自殺という、幼さとけなげさが芝居のなかでうきぼりになる。布を使った演出がいいが、上から降りてくる照明にはあまり意味がないような。
 大詰めは、演出的にはハデだけど、実際のところあまりたいしたことはやってない。勘三郎は顔中いろんな体液だらけ(汚くて済まぬ)にしての大熱演だったけど、他の二人は最大限まで使い切ってない感じがした。
 前年の「四谷怪談」の南番では、勘三郎VS橋之助の殺陣が素晴らしかっただけに残念。芝居とは関係なく、殺陣をする役者同士が、互いがやり合える楽しみにワクワクしてたまらないのが客席にも伝わってくるような殺陣は、今まで見た中では「四谷」の南番、「牡丹灯篭」の大詰めぐらいかな。
 あと、肝心?の椎名林檎の音楽だが、ヴォーカルが入ってしまうと、現実に引き戻されてしまう感じがする。大詰めの殺陣が椎名林檎の音楽のリズムに引きずられ、テンポが遅くなってしまったきらいもありました。
 

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