2007/07/18
ベルナール・スティグレール『現勢化』
現代フランスの哲学者としてはかなり活発に発言をして注目されている一人ということだが、経歴が面白い。よくある、高等師範学校出身の哲学教育コースを歩んできたのではなく、高校を中退し共産党に入党、 その後カフェバーを経営するが行き詰まりなんと銀行強盗事件を引き起こす。しかしそれが逆に人生の転機となり、入獄中に哲学書を読みふけり、そして哲学者としての再生を果たすのである。
どうにもこの人の本や思想以前にこの人生のほうがよほど面白いのではないかと思ったりもするが、それはそれ。本の印象は、本当に哲学書である。最近の思想書などではかえって少なくなった、自分ということや人生をきちんと正面から見据えている印象で、なんだか懐かしいような新鮮なような感覚を抱いてしまった。この見据え方がいかにも独房的である(実際に「独」房だったのかどうかは不明だが)。何もない場所で、自分自身を掘り下げることによって発生する言葉たち。実際、哲学とはいつも「ある哲学者の哲学」でしかありえない。そして、このスティグレールの哲学は確かに独房の中で紡がれたような言葉なのだ。いやしかし、これまでの哲学もやはりそのような独房めいたものであった。現代という時代が、独房的環境を許さなくなったので、実際に独房に入る以外に独房的な言説は生まれてこないということだろうか。
かくしてまるで独房の言説をひっさげて独房から生還したかのような彼は、テクノロジーの問題など、きわめて現代的なテーマにも積極的に発言をする。独房とテクノロジー。いや、確かにテクノロジーを相対化して見るには、よい方法かも知れない。だが、僕の個人的な好みから言うなら、むしろテクノロジーの言葉で独房を語ってほしいのだ。
『ono-deluxe』(小野裕三公式ブログ)
『ono-deluxe』(小野裕三公式ブログ) 俳句・俳句評論など、いろいろと書き物をしています。 ...
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- 2012/01/30更新
- 2007/03/12登録






