2007/12/21
よしもとばなな『こんにちわ!赤ちゃん』
よしもとばななの小説はひととおり読んだのだけれど、エッセイは読んだり読まなかったり。それでも、子育てテーマということでこの巻は読んでみることにした。で、読んでみると子育ての話ばかりというわけでもなくて、基本的にはやっぱりよしもとばななの日記なので、ちょっとばかり拍子抜けする。ちなみに、彼女は38才で初産だったそうだが、それ、うちの妻とおんなじです。
それはそれ、このエッセイはいつものよしもと調で、出産・子育てをめぐる的確なコメントにはっとさせられる。面白いと思ったのが、産院のスタッフたちを「懐かしい人たち」「なんだかいっしょに合宿に行ったことのある人たち」と書いているのは、うまいことを言うなあと思った。僕は勿論、産院に入院したことはなくて、妻の入院を見ていただけなのだけれど、この感覚はなんだかよくわかる。あと、子供を産んだことによって「親のエネルギー状態がぐぐっと上がったのを見て、ああ、新しい生命にしかできないことはあるなあ、と思った」というのも的確な見方だと思った。そう、確かに新しい命は、それを生み出した血族に力を与える。これは不思議なことだが、確かに実感なのだ。新しい命自体は何にもしないのに、みるみる周囲を変えていく。
ところで、子育てとは少し離れるのだけれど、彼女はこの時期、なんだか変な「元・税理士」にだまされて貸したお金を返してもらえないというトラブルに巻き込まれていたようだ。「本当にどうしようもない中途半端に悪い人がこの世にはいるものだなあと思う」という感慨は、なかなか味わい深い。確かにいるのだ、そういう人。人間として恥ずかしいという感覚はないのかなあ、とよく僕も思うのだれど、そういう人の根本的な世界観が理解できないので、きっと何千年付き合っても共有できることは何もないのだろうと思う。




