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2007/12/21

内田春菊『私たちは繁殖している』

 妊娠関連の文化人のエッセイの類は少しばかりいろいろ読んでみたけれど、この内田春菊のシリーズが一番面白かった。何しろ四人も子供を産んで(しかも一人の父親ではなく)いるという辺りからして体験も豊富だし、その都度違う出産を体験しているというのも面白い。さらに作者ならではの毒というか、やや斜に構えて見ているところがなんとも痛快とも言える。子育てというのは、不思議に〝建前〟のようなことが大手を振って歩きやすい。建前だらけの子育て論はしかし、なんとも面白くない。イエローの巻(このシリーズは、巻ごとにレッドとかブルーなど色の名前が付いているのだ)に出てくる、作者自身のある決意のシーンが僕は一番好きだった。産後一ヶ月の検診に行ったところ、ある病気でないことの結果を早く知るために母乳を止めてみなさいと言われたり、果汁をあげるのは「必要ない」と言われたりして、作者は困惑するのだ。せっかく母乳が出るからそれをあげているのに、なぜそれを止めなくてはならないのか。子供が喜んで飲んでいる果汁なのに、「必要がない」というのはどういうことなのか。そして、「不安になるために行ったようなもんだ」と気落ちし、「でも、こいつ(=子供)は元気だ」と思った彼女は、その小児科には二度と行かない決断をする。それは、自分が自分の責任で子供を育てるという彼女にとっての決断の瞬間だったわけだ。
 実際、抱き癖がつくといけないとかいうのも最近の学説ではまた見解が変わってきているとか。あるいはこの本によると、徳川家康は八歳まで乳母の乳を飲んでいて、織田信長は十二歳までおむつをしていたとか。本当かどうか知らないが、こんな話を聞いているとあまり妙な原理原則に拘るのが馬鹿馬鹿しくなる。
 ちなみに、この本には出産雑学的な話もあって、これがなかなか面白い。江戸時代の産婆さんは、赤ん坊の頭を捏ね回して細長くして出産しやすいようにしたのだ、とか、眼から鱗の話。あと、胎盤を煮物にして食べる地方もあったとか、確かに出産周りの話は土俗的な神秘がいろいろとありそうだ。

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