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2008/02/02

落書きの部屋

その部屋は南向きの大きな窓のある台形で

その家に引っ越したのはいつの事だっただろうか?

僕はまだ幼稚園にはいったばかり、双子の弟たちが生まれて間もない頃だったと記憶する

大きな魚市場のある港から歩いて10分ほど川を遡ったあたり
九州へ向かうフェリーの音が2時間おきに聞こえる

海から2つ目の橋のたもとにあるその家の
川沿いにある日当たりのとても良いその部屋
床はひんやり 木で出来てて、暑い夏は頬を添わせるととても気持ちがよい

僕たち兄弟はその部屋で遊んだ

玄関を入り廊下をまっすぐ行くと突き当たり
左に登る階段で2階に上ると目の前には西向きのベランダがある

ベランダに出る窓をもう一度左に曲がって廊下を歩いた突き当たりの扉

「カチャリ」と軽い音を響かせて手前に開いた扉の向こうには、4つの少し青みがかった白い壁があった

「この壁にはなにを描いてもいいぞ」

明るく風通しの良い部屋には
ミニカーや絵本、たくさんのクレヨンや色鉛筆が置いてあった

ちいさな僕は最初に「じどうしゃ」をたくさん
そして手の届く範囲でいろんなモノをいっぱい描いた


弟が少しだけ大きくなった頃に、僕はその部屋の管理者となり先生となった

「そこに描け ちょっとチガウ」

彼らは「じどうしゃ」を横から書き、僕は「車」を斜め上から見たところを描いた
彼らの届かないあたりに僕は描き、弟たちは僕の仮面ライダーの残骸をなぞった


中学生になるころその部屋は僕のモノになった

自分たちで作った壁紙の模様はずいぶん高いところまで出来ていたけど
チビだった自分に届かないその場所はすっかり忘れられ、僕はギターに没頭した


高校に入った頃
いつも一番前だった僕の背はその位置が日ごとに少しずつ変わり
1年生の終わりには後ろから4番目になった

冬も終わる頃のとある日の朝
目覚めると、部屋の上の方、未完成の壁紙がとっても気になって・・・

三日後の夜、絵の具と鉛筆とでその壁紙は完成した

下から上へ
少しずつ今の自分になっていく痕跡を眺めたとき
僕は美術をやってゆこうと決心した

その一週間後

僕は部屋の壁を全て新しく貼り替えた

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