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2008/05/08

『豆の木12号』

 新聞紙のやうに疲れて鮎を喰ふ  大石雄鬼
 海しずかヌードのように火事の立つ こしのゆみこ
 炎帝や海の突き当たりを探せ 近恵
 おほかたは影としてあり菊人形 齋藤朝比古
 二科展へゴムの木運び込まれをり さいばら天気
 青葡萄それからずんずんあるいた 高橋洋子
 連想ゲームの終わりは晴れて鯨かな 田島健一
 眼を瞑りそっと朧に加わりぬ 月野ぽぽな
 着膨れて妻に掃除機で転がされ 峠谷清広
 冬木より冬木へ帰る子供かな 中島憲武
 枯蓮やオスマン・トルコ大移動 日高玲
 絨毯の囲み模様の中にをり 星力馬
 台風のにおいをつけて父帰る 三宅やよい
 ともだちの流れてこないプールかな 宮本佳世乃
 都市ガスの端のつながる銀河かな 室田洋子
 教室にメモの回りて星まつり 矢羽野智津子
 みづいろの水着もつとも濡れてをり 吉田悦花
 饅頭の湯気思わず復習を誓う 上野葉月
 秋の蚊のごとく洋子に叩かるる 遠藤治
 靴跡を踏んで靴行く聖誕祭 大田うさぎ
 青鮫の来るほどシンク磨きけり 岡田由季
 春愁や筆洗ふ水渦なせる 加茂樹
 大地という自我鈍色に木の実降る 川田由美子
 御降の空やてけてけ跳ね太鼓 菊田一平

 こうやって書き出してみると、今年も豆の木の参加者は増えた。新しい血がどんどん入ってくるのはいいことである。
 で、そう思ってみてみると、意外に(と言っては失礼かも知れないが)そのような比較的新しいメンバーの句が新鮮に見えた。豆の木には句歴の長い人、もしくはいろんな大きな賞を取っているようなベテラン(と言っても、俳句界全体から見ると「新人」などと呼ばれてしまうのだが)も多くいる。だが、そのような人の句よりも新しいメンバーの句のほうが不思議と面白く感じた。勿論、ベテランの人の句は、こちらが見慣れてしまったということもあるのだろう。また、新しい人というのは、全部直球勝負みたいなところがあって、それが面白さに繋がるケースも多い。と、まあそんな要因はいろいろある。あるにしても、いずれにせよ新メンバーの作品群はなかなか面白く感じた。具体的に言うと、近恵さん、それから新というわけではないが豆の木メンバーとしては新しいほうの部類に入る、高橋洋子さん、宮本佳世乃さん。
 しかし、新鮮さを維持するのは確かに難しい。芸風の洗練は一方で芸風の固定化にも繋がる。新人は、その個性自体が何よりも新鮮というところがあるので、新鮮さは常に新人のほうに有利に働く。見るほうの眼も慣れっこになってしまっているのはある程度しょうがないにしても、ある程度の年数が経った人はいかに新鮮さを維持するかということを考える必要はあるように思う。その人の存在自体は確かに新鮮でなくなっても、気持ちを新鮮なレベルに維持することはできる。田島健一さんのように、手法的な実験性がそれになる場合もある。それと、実は季語の世界を深めることでこの新鮮さに繋がるということもある。慣れっこになった季語は使わずに、自分にとっては新しい季語を使うことで新鮮さが出てくる場合もある。あとは作る場所を変えるということで、やはり旅先などでの吟行は新鮮さを作り出すのには役立つ。

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