2008/09/17
金融ロシアンルーレット By ポール・クルーグマン
クルーグマンの話をタイムリーに翻訳して載せてくれている方がいた。Translation Noteさんに感謝。
http://blog.goo.ne.jp/kkt_2008/e/...
金融ロシアンルーレット By PAUL KRUGMAN 2008.9.14
アメリカの金融システムは今日、あるいはここ数日で崩壊してしまうのだろうか? 僕はそうは思わない、ただ確信を持ってはそういえない。リーマンブラザース、主要投資銀行のひとつが、あきらかに破産しようとしている。次に何が起きるかは、だれにもわからない。
この問題を理解するためには、古いタイプの銀行、お店が大きな大理石のビルにあって、預金を受け入れ、長期の顧客に資金を貸し出すような銀行は、ほとんどなくなってしまったことを知る必要がある。それは一般に「影の銀行システム」というものに置き換わっている。預金をする銀行、大理石のビルで働いているようなやつは、預金者から貸出者への資金のチャネルとしては、いまや大した役割を果たしていない。金融ビジネスのほとんどは、「預金を扱わない」金融機関がアレンジする、複雑なとりひきを通じて行われているのだ。そういった金融機関が、今は亡きベアー・スターンズやリーマンというわけだ。
新しいシステムは、リスクを拡散したり減らすのが上手いと考えられていた。ただ住宅バブルやその結果の金融危機をみてみると、リスクは減ったというよりは、隠されていたと見るほうがよさそうだ。あまりに多くの投資家は、どれほどリスクに無防備かわかってなかったというわけだ。
知られざる未知が、知られる未知になり、金融システムは、現代の銀行取付け騒ぎを経験することになった。これは一見すると、昔起こったこととは異なっているようだ。固く閉じられた銀行の扉の前に殺到する、錯乱した預金者の嘆きについては、ほとんど例外なくふれられていない。その代わりに、金融機関が融資限度額を引き上げたり、契約相手のリスクを手仕舞いしようとするときに、狂ったように電話をしたりマウスをクリックするのが話題になっている。ただし信用が収縮し、資産価格がダウンスパイラルにおちいるような経済的な影響は、1930年代の大銀行への取付け騒ぎと同じだ。
つまりこういうことだ。当局は取付け騒ぎの再来を防ごうと準備をした。主に預金を扱うような金融機関で、連邦銀行の信用枠にかかわるようなところ、つまり現在の危機の中心ではない大理石のビルにいるようなやつらを守ろうとしたわけだ。これが、2008年にも、1931年の再来が起きる可能性を現実のものとした。
現在、政策担当者はリスクに気づいている。世界を救う責任がある以前に、ベン・バーナンキは大恐慌での経済について最もよく知っている専門家の一人だ。だから昨年は、連邦銀行と財務省は協調して、一連の臨機応変な救済策を講じてきた。発音もできないような頭文字の特別な信用枠が、預金を扱わない金融機関でも利用できるようになっている。連邦銀行と財務省は、ベアー・スターンズの取引先を保護するための取引がまとまるように取り計らった。取引先とは、株主のことではなくて、取引の相手方という意味だが。そして先週財務省は、政府が出資している巨大な不動産融資会社であるファニー・メイとフレディー・マックを配下におさめた。
しかしこういった救済策は、当局を神経質にさせている。ひとつには、税金で大きなリスクをとっているからだ。たとえば、今日連邦銀行のポートフォリオの大部分は、担保が不完全な債務に塩漬けになっている。また当局は、こういった救済策が将来、よりリスク指向的な行動をとらせることにつながらないかも心配している。つまり、コインの表がでれば自分の勝ち、裏がでれば税金で埋め合わせればいいといったような風潮を生むのを心配してるわけだ。
リーマンの話をしよう。多くの不動産関連の損失を抱えて、信用危機に直面している。多くの金融機関同様に、リーマンも巨大なバランスシートをかかえ、巨大な資産と、その反対側に巨大な負債がある。この巨大なバランスシートをすぐに清算しようとすると、金融システムをパニックにおちいらせてしまう。これが政府当局とプライベートバンクがニューヨーク連銀に集まって、週末を費やして、リーマンを救うか、少なくとも破滅をゆっくりにする取り組みをしている理由だ。
財務省長官のヘンリー・ポールソンは、断固として、より税金を投入するような取り組みはしなかった。多くの人は、はったりをかましているだけと思っていたのだが。僕は今日のコラムをもうすこしで「リーマンが危ないなら、助けるしかない」とはじめるところだった。(訳注:実際の意味は複雑で、When life hands you lemons, make lemonade. にかけて When life hands you Lehman, make Lehman aid. と書いてる。レモンしかないなら、レモネードを作るしかない、つまり事態が悪いときには、その中でできるだけのことをするという意味)。しかし実際には、助けはなかったし、あきらかに取り組みもない。ポールソンは、金融システムがリーマンの破産のショックを乗り越えられるほうにかけたわけだ。金融システムが特別な信用枠で強化されることは、言うまでもないが。ポールソンが勇敢なのか、バカなのかは、すぐに分かることだろう。
今回の騒動への本当の答えは、もちろん、こんなことになる前に予防的な措置をとらなければならないということだ。明らかに規制する必要のある影の銀行システムを放置しておいて(つまり銀行のように救う必要のある機関なら、銀行のように規制しなければいけないはずだ)、なぜ今回のようなショックに、なにも準備をしていなかったのだろう? ベアー・スターンズが破産したとき、多くの人は破綻した投資銀行の「整然とした清算」のメカニズムの必要性について主張した。そう、六ヶ月前にだ。メカニズムはどこにいったんだ?
だから事ここに至って、ポールソンはアメリカ金融システムで、ロシアンルーレットをやってみるのが一番いい方法だって思ったんだろう、 うわぁー。
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コメント(21)
最新コメント20件
2008/09/17
Go涼 勉強になりました。ありがとうございます。
CLASH 金融工学だ規制緩和だとか言っても、結局、人はテメェの金は信用出来なさそうなやつには貸さないが、人の金を動かしてサヤ取れるなら相当やばそうな話でも目をつぶってやってのけるって事で、失敗しても自分の金は安泰 そりゃおかしくなるよねーって(笑) この先はAIGやらシティがやばそうなのと、何よりファニーメイとフレディマックが20兆円で済むのかという、そして最後は実体経済の悪化・・・・なんか当面目を離せません。
CLASH あ、AIGは国有化された(笑)
凡人 やっぱり4番じゃなく1番がぶっ飛びそうな時は、9兆円も注入しちゃうんだなぁ。見返りが80%の株式って強引だなぁ(笑)
CLASH 順位もさることながら、AIGやファニーメイとフレディマックは、個人相手の部分が大きいからってのがポイントでしょう。取り付け騒ぎ・解約騒ぎが起きたら、金融の本丸、預金を主とする銀行が風評を含めておかしくなりますから。ベアもリーマンもかなり強引なグレイなやり方でのしてきたカイシャで、それをよく知ってるポールソンは、ベアは金融システム救うために助けたけど、リーマンは助けなくてもいけそうなんで、悪行のツケはきっちり払え だった気がします (笑)
凡人 丁寧に教えてもらって、ありがとうございます(礼)
2008/09/18
CLASH 自己満足で書きます。NHK見てたら、AIG救済したのは、債権の保険をたくさんやってて、これが破綻したら大変だから なんて言ってて、これはCDSのことですが、それならリーマンだって相当やってた。何言ってやがる(笑) プロの方の某ブログもこういった解説は嘲笑っていて、やはり「なぜリーマンは救われなくてAIGが救われたのか。いろいろな意見があるでしょうが、ひとつはリーマンは所詮法人の世界の話です。いわゆるプロが損をする、という構図。リーマンのリスクくらい、君たちわかってたでしょ? ということですね。一方のAIG. 個人、しかも中国もインドも、もちろん日本も世界中の個人が被害をこうむる。ここに公共性を見出した、と考えていいでしょうね。GSEの救済も同じ発想で、オールアメリカンだったら、ポールソンも倒してたかもしれない。しかし60%が海外に保有されているとなるとそうもいかない、というのが基本的な考え方でしょうか。」と言ってます。リーマン株を保有していた機関投資家はもちろん、一般個人の投資家でも、それは損も覚悟での株式売買でしょ、でもAIGの保険に入ってるフツーの大勢の人がこんな成り行きで会社つぶれて保険がパーになったりしたら、大変なことです。そうなったら、AIGかどうかに関係なく、全ての一般人が、預金とか保険とか、自分がお金出してる金融商品がいつ突然パーになるか、と言う恐怖にとりつかれますから、それこそ取り付け騒ぎ・それもワールドワイドでの大騒ぎであっという間に世界恐慌になります。ファニーメイとフレディマックも、これがつぶれたら、元々アメリカの個人の住宅取得を後押しするための機関ですから、住宅ローンの世界がめちゃくちゃになって、一般個人がエライ目に遭う。同時にその債権は何百兆円が世界中にばらまかれてますから、世界の金融システムも一発で崩壊します。 で、この程度のことはフリップ使って視聴者に簡単に説明できる話なのに、どこのテレビ局もちゃんと解説できてない。だから一般人はノーテンキなままか、理由わかんないまま怯えるかになっちゃいます。マスゴミってホント騒いで不安あおるだけのクズだって、改めて思いました。
雲衣。 クルーグマンの所説だけでなく、CLASHさんの解説もとても興味深く、今起きていることの理解を助けてくれました。一点、とりわけ面白く読んだのはクルーグマンが《 当局は取付け騒ぎの再来を防ごうと準備をした。主に預金を扱うような金融機関で、連邦銀行の信用枠にかかわるようなところ、つまり現在の危機の中心ではない大理石のビルにいるようなやつらを守ろうとしたわけだ。これが、2008年にも、1931年の再来が起きる可能性を現実のものとした。》と書いている部分の【1931年の再来が起きる可能性】これはおそらく「フーヴァーモラトリアム」(『世界史用語集』●フーヴァーモラトリアム;
;1931 年、世界恐慌が波及して財政危機となったドイツ
救済のため、フーヴァーが発した戦債・賠償支払い 1 ヵ年
停止の猶予令。ドイツの対連合国賠償の大部分は戦時債務
としてアメリカに流入していたから、ドイツ救済はアメリ
カの利益と合致すると考えたが成功しなかった。)を指しているのでしょうが、とすると、クルーグマンは既に現在2008年を「世界恐慌」に突入していると見ている証左になるのではないでしょうか。 あと、残るは「世界戦争」だけです/笑。 今度おきるのはヒットラーのポーランド侵攻に代わって新ロシア帝国のラス・プーチン二世による「ウクライナへの電撃戦」ではないでしょうか。。。 オバマ大統領なら参戦しない可能性もありますが、マケインが大統領になっていた場合、ほぼ確実に世界大戦が始まるように思います。
島崎丈太 12:44時点で、昼飯をつまみながらネットを見ていたら、モルガン・スタンレーとワコビアが合併交渉の噂、とか、HSBCがモルガン・スタンレーの買い手候補にの噂、とか、色々出てきていますね。 これは数日内に凄いことになるかも?
CLASH ゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレーは大丈夫かと思っていたら、モルガン・スタンレーは手当たり次第に合併交渉しかけてるようですね。こりゃ金融恐慌と言ってもいいっぽい。商業銀行大手がとんだら(シティ?)間違いなく恐慌認定でしょうけど、この勢いだとマジでとびかねない。一方で金(きん)も一気に急騰(一日の上げ幅としては30年ぶり)してるし、信用不安の市場心理が、どうやら閾値を超えたのかな。こりゃすごいや。バーナンキとポールソンが打つ手をひとつ誤ったら(リーマンで既に誤ったとも言える)、ただでさえぐらぐらのドルの信認が一気に飛びかねない。
2008/09/19
CLASH 世界恐慌→第三次大戦 と言う図式は、いくつかのブログでも言及されてますね。それも、中東・ロシア・中国がらみで。イランvs.イスラエルはかなりやばいとこまで来てるようですし、そこが発火点という話はそれなりの説得力がありますが(イスラエルはかつてイラクの原発を空爆してますし)、どこまで拡大するか ですね。もっと面白いのは、米国債保有世界一の中国が、このアメリカ経済の苦境を買い支える代わりに、アメリカに台湾併合を黙認させる と言う説です。いずれにしても、日本はぼーっと傍観してるうちにカモにされるっぽい(笑)
雲衣。 世界で一番「経済マンガ」も読んでいる麻生太郎次期首相候補は《「日本に与える影響は極めて大きいと予想されるので我々は万全の態勢を敷いている。皆さんがこの騒ぎでおたおたする必要は全くない」と述べ》て大きなイモ判を押してます。どうか安心してください。 「必沈巨大泥戦艦ヤマト」情報でした/笑。
CLASH リーマン・ブラザーズの経営破綻に関して「日本にももちろん影響はあるが、ハチが刺した程度。これで日本の金融機関が痛むことは絶対にない。」なんて寝言言ってる与謝野候補に比べりゃ、同じリップサービスでもだいぶマシかと思います(笑)
島崎丈太 ライス長官がロシアを「無法者」呼ばわりして伏線を張りつつあるような気がします。 米政府にとってラッキーな状況なのか、プーチンをも含む「誰か」がそういう流れを作り出しつつあるのか?
CLASH ライスはロシアが専攻だと記憶してますが、紛争のちょっと前にグルジア入りして、サーカシビリに、南オセチアに侵攻してもロシアは出てこない と保証したんじゃなかったかしら?(笑) ロシアは暴落で株式市場閉めちゃってますね。米国債もどんどん売ってるようだし、どうなることやら。
雲衣。 コンディ・ライスの政治学博士 学位論文は『ロシアにおけるソヴィエト赤軍の成立過程』といったようなものだったと記憶しています。(10年以上も前に知ったことでいまとなってはややうろ覚えの部類ですが、、)。いずれにしても彼女は軍事専門家の筈です。ロシア共和国軍はグルジアで国際世論の反応や旧ソ連邦に属したソヴィエト赤軍麾下のグルジア共和国軍・等・がどう軍事対応するか「実験」をやったのだとも思えます。本命はやはり魅力的な大穀倉地帯と不凍港を持ち、欧州連合にすり寄って後ろ足で砂をかけているウクライナではないでしょうか。
2008/09/23
CLASH ゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレーが投資銀行やめて商業銀行に鞍替えし、SECに比べずっと厳しいFRBの監視下に入る事になりましたね>http://jp.reuters.com/article/... これで90年代からアメリカ金融を引っ張ってきた投資銀行の大手が全て姿を消しました。恐竜の時代が終わったかのような激変です。さらに、三菱UFJがモルガン・スタンレーの筆頭株主になりそう。ダイナミックだなあ(笑)
島崎丈太 それにしても、「投資銀行から商業銀行に」と簡単に言われても、具体的にどういう変化があるのかイメージ出来ずにおります。 監督官庁が変わるだけで実際の業務的には余り変らないのか、それとも普通にATMとかのある銀行になるのでしょうか。(まさかね?) もしもゴールドマンやモルスタが滅び行く恐竜のようなものだったとしたら、三菱UFJがババを引くことにならないよう、祈っています。(バブル崩壊前にNY市のロックフェラーセンターを買収して大損失を出した三菱地所のようなことになならないのでしょうが、三菱UFJにはあんなところの連中とちゃんとやり合えるだけの腕力があるのかしらん?)
2008/09/24
CLASH 投資銀行と言っても、彼らの利益の大半は仲介ではなくトレーディング部門からくる=金を外部から調達して、自分の判断でレバレッジかけた投資してもうける ってのが基本です。ゴールドマン・サックスがサブプライムで下げ相場にかけて5000億円儲けたのなんかが典型ですね。個人から預金を預かる商業銀行になると、こういう行為は預金保護の観点からかなり規制されちゃいます。つまりもう大暴れできなくなる。人の金預かってんだから、大儲け=失敗したら大損 はだめよ堅実にやれってことですね。金融恐慌の反省で出来た規制です。ゴールドマン・サックス等が自分で預金集めるか他の商業銀行を買収するかはこれからなのかな?
CLASH 三菱UFJと野村は、金額的にはいい買い物したと思いますが(株価暴落でチョー割安に買えた)、三菱UFJの場合、その企業体質というか堅い社風から言って、モルスタみたいな投資銀行と相性悪いでしょうから(リスクテイクの度胸とか、判断スピードが全然違う)、うまくやっていけるかどうか、けっこう難しいと思います。 それにしても株式は下げ続けてますね。救済策に実行あるのか、議会で通るのか、投資銀行が無くなったらそもそも今までの株式相場はもう成立しないだろ(堅実なプレイヤ-ばかりになるから)とか、いろいろ要因ありそうです。
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