2008/11/19
奥野卓司『ジャパンクールと情報革命』
面白い主張と言えば面白い主張なのだが、全体にどこか既視感めいたものがないわけでもない。例えば、コンテンツ産業を中心とした日本産業の未来のあり方と、日本の江戸期の文化のあり方を重ねる視点が提示されるが、思い起こせば「江戸」≒ポストモダン、的な言い方は昔からあったように思う。あるいは、「モノ作り」から「モノ語り」≒物語へ、という言い方でも日本産業の未来を提示するのだが、これも「物語」的なものを生産・消費のサイクルの中心に据えるという見方はやはり以前からあった。いや勿論、それは用語上の同一性だけなのかも知れないが。
とは言え、面白い指摘もある。ひとつには、「情報社会」の姿はひとつだけではないのではないか、という指摘。アメリカ型の「情報社会」(これが通常想起されるもの)だけではなく、東アジア型の「情報社会」があるのではないか、ということ。そしてこのような可能性があるにも関わらず、日本人はIT革命を(それまで得意だった)製造業の延長で捉えようとして、そこに新しい産業や文化の姿を生み出そうとする考え方は希薄だった。そして、それは著者の指摘のとおり、確かにそのとおりだと思う。そんなことは、ソニーとアップル、といったことを比較すれば明快だ。そして、確かに今の日本に欠けているのはIT革命を通じて新しい産業や文化の姿を、つまりは「情報社会」の姿を作り出そうとする意思だろうし、そこには確かに「アメリカ型」とは違う、ひとつの日本ならではのオルタナティブがあるのかも知れない。
そのオルタナティブが果たして江戸時代的なものとどこまで重なるかは別の話にしても、確かに江戸であったり、あるいはオタク文化であったり、といった日本的な爛熟文化がひとつの示唆になる可能性はあるだろう。というより、むしろそのような固有の視点を参照しながら、日本ならではの「情報社会」のオルタナティブな姿を作り出す必要がある、と考えるべきだ。つまり、江戸≒ポストモダン、といった図式に見られたような安易な日本礼賛をするつもりはない。ただ、我々は確かに何かのオルタナティブを作るべきだし、その可能性の萌芽くらいは持っているのだ。
『ono-deluxe』(小野裕三公式ブログ)
『ono-deluxe』(小野裕三公式ブログ) 俳句・俳句評論など、いろいろと書き物をしています。 ...
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- 2012/01/30更新
- 2007/03/12登録






