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2008/12/02

山本一郎『情報革命バブルの崩壊』

 昔、ネットバブルと言われたものは確かにあって、それはあっけなく崩壊した。それでも、インターネットやデジタルといったものは経済的にも成長分野・注目分野であることには間違いなく、その後もプチバブルのようなものはいくらでも起きている。確かに、ネットやデジタルは大きな革命を齎すだろうし、実際にある程度齎している。それは、明るい未来を齎しうるし、またそうなっている部分も既にある。 
 だが、そのことは何かの「ツケ」を見えないところで作っているのではないか? 例えばインターネットは便利だ。無料の情報をいくらでも手にすることができるし、無料の動画をいくらでも楽しむことができる。それも、きわめて安価に。だが、ふと冷静に考えてみれば、どうしてそんなことが可能になっているのか? 無料のサービス、安価なサービス、それはどこかで誰かが(あるいは将来の自分たちが、もしくは結局回りまわってきて現在の自分たちが)その「ツケ」を払っているのかも知れない。そんな不安が起きても当然だ。
 米国などでは以前から「ネットの中立性」という議論がある。これはもっぱら、ネットでの収益をどう配分していくか、あるいはそれを維持するに必要なコスト(特にインフラ的な部分)を誰が負担するか(場合によって、公共的な第三者が負担すべきではないのか、という視点も含め)という議論だと思うが、この話はインフラだけの話ではないだろう。例えば、無料の情報。新聞社などが取材してきた情報は、結局のところ多くのネットユーザーにはタダで利用されている。当然、ここでも同様の中立性の議論が起きてきて不思議はないし、実際にそのような報道機関を公共的に資金支援もしくは国有化しようというアイデアもあるようだ。そして、このような問題に何らかの対策を考えない限り、誰もそのような下支えの部分のメンテナンスをする人がいなくなってしまう。第一次情報を取ってくる報道機関が経済的に立ち行かなくなれば、やがてその仕事を担う人であり機関はなくなってしまうかも知れない。通信のインフラについても同様のことがありうるし、仮にそうでなくても、結局何らかの形でそのことはユーザー自身の身に返ってくる。インターネットによる無料経済の享受が、回り回って「不況」という形で返ってくるかも知れない。
 けれども、複雑なネット世界の仕組みや、さらに複雑な経済世界の仕組みが絡まりあって、多くの人の眼にはそのような「ツケ」が見えにくくなっている。なので、目に見える部分ばかりを取り上げて薔薇色の未来を描くこともできる一方で、実際には裏側にいろんな「ツケ」がある。この本は、そのような「ツケ」の部分をネットや経済のことに明るい著者が赤裸々に描いていて面白い。かなり厳しい言い方もしていて、インターネットとは結局のところ、「貧乏人がいがみ合うメディアに過ぎない」とも著者は言っている。その他にも、例えば話題のケータイ小説などに見られるネットが齎した新しいブームも、「ネットの元から持つアングラ的なスキルや方法論」による「作られたブーム」である場合があり、「その方面に詳しい人々」も「首をひねるばかりの事例が続出」している、とする。
 結局のところ、著者が指摘するように「無料文化」に支えられたビジネスモデルは、「仕組みの陳腐化のスピードが速すぎ」るということは確かにありそうだ。そして、それはビジネスモデル(≒新興企業)だけでなく、インターネットが生み出した新しい文化やコンテンツもそういうことはあるかも知れない。賛否両論のケータイ小説なども含めて。

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