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2009/06/22

日経コミュニケーション編『ARのすべて』

 ネット業界の旬なバズワードのひとつとして「AR(拡張現実)」がある。「クラウド・コンピューティング」などもそのような言葉のひとつだが、「クラウド・コンピューティング」よりもしっかりとした実体があり、そして何よりネット進化の方向性をきちんと指し示す言葉になっていると思う。さらに言えば(この点は大切なことだと思うのだが)、何か〝夢を与える力〟のようなものがこの言葉もしくはこの概念にはあると思う。ネット関係の用語に関して言うと、このような〝夢を与える力〟というか何かの喚起力はとても大切だと思っている。実際、これまでもネットの進化はそのような言葉や概念の喚起力に支えられてきた部分が多分にあると思う。そういう意味で、僕はこのARには期待したいのだ。
 ところで、このARもそうだし、あるいはクラウド・コンピューティングもそうなのだが、それは実は「ユビキタス・コンピューティング」と呼ばれてきたものの思想と見事に合致している。要するに、両方とも「ユビキタス・コンピューティング」の派生物もしくは現代版、と思ってそう間違いない。リアルに浸透するネット、もしくはネット的構造に組み替えられるリアル、というのは今後の不可避の流れであって、そのための技術の一端がARでありユビキタス・コンピューティングである、ということに他ならない。
 技術的な解説はこの際本書に譲るとしても(技術的なことも丁寧に解説してあるので、親切な内容になっている)、実はARとはひとつの世界観というかきわめて哲学的なものであると思う。そのことを端的に示していて面白いエピソードだと思ったのが、有名になった「セカイカメラ」を開発した井口氏がもともと大学の哲学科の学生だった、という話。哲学的という意味では、KDDIの人の話もどこか哲学的で面白かった。携帯電話のようなデバイスが高度・他機能になるにつれ、端末は「操作する」ものから「対話する」ものに変わっていかざるをえないというのだ(なぜなら、利用者がその端末の全機能をあらかじめ把握することは不可能になっていくから)。別に携帯電話だけに限らず、高度な技術の浸透は不可避的にそのような現象を生むと思うし、それは概念だけをぐるぐる弄り回すよりも、世界へのインターフェイスを変えるという意味でよっぽど哲学的に面白い現象のはずだ。
 結論。ARは哲学的である。なぜなら、それは世界とのインターフェイスを変えるから。であるがゆえに、それはクラウド・コンピューティングやNGNなどよりも遥かに興味深い現象なのだ。

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読後評:ARのすべて ケータイとネットを変える拡張現実

  • 日々 是 変化ナリ 〜 DAYS OF STRUGGLE 〜 | Tracked: 09.7.30 9:52 pm

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