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2009/12/24

中原道夫著/Jカーカップ訳『蝶意』

 つきし羽根みな寝静まるころに落つ
 いつまでも哭くなら涅槃図へお往き
 のどかにて棺の窓を開け廻る
 思ひつくやうに灯の点く春の家
 いくたびも蝶に生れて蔑まる
 立て掛けし梯子の根付く萬愚節
 汝が麻酔醒めたる頃か夕桜
 春愁につながる紐やどれ切らむ
 相席をまね壷焼を啜りけり
 なめくじり文字をさすらふことに覚め
 番傘を開きしにほひ蛍闇
 瀧落ちて水のあとさき狂ひけり
 のど飴の箱往き来せり蓮見舟
 陶枕に夢の出てゆく穴ふたつ
 かはほりのぶつかつて空暗くなる
 踊りの輪酒の力をもて廻す
 俗物の顔秋風を割つて来し
 残る柿みな電飾を気どりをり
 立冬のホースいつかの水眠り
 神降りるための畳の替へてあり
 さびしさのまんまと罠にかかりけり
 売れ残る犬の欠伸クリスマス
 ※漢字表記については、パソコン表示の限界のため、現句どおりではないところがあります。

 中原道夫氏から送っていただいた。作者のサイン入りなので、かなり嬉しい(中原さん、ありがとうございます)。
 今回の本は、英訳つきということで、一応英訳のものも読んでみたのだが、個人的にはやはり俳句は英語より日本語で読んだほうが面白い。勿論、それは僕自身が日本語にネイティブだからという理由もあるのかも知れないが。ともあれ英訳は英訳として、今回の本はそんなわけで中原氏の現時点でのベスト版みたいになっている。それが、中原氏の一ファンである僕としては、率直に楽しめる。
 中原氏を見ていると、ああ今の時代にもまだ「俳人」はありうるのだ、という奇妙な安心感を覚える。勿論、中原氏がいろんな意味で独自のスタイルを貫く(ある意味で反時代的とすら見えるほどに)ことにこだわっていることは承知の上で、それでも今の時代を共に生きる人の中に中原氏のような人がいることにはやはり何か不思議な安堵を覚える。英訳句集という趣旨からは矛盾するかも知れないが、それでもあえて言えば僕はやはり俳句とは「和」のものだと思うし、その和には強い芯のようなものが必要だ。そこには、古くから伝わる日本の武道や宗教に携わる者が共通して持っている強い芯のようなものがある。僕は、そのような和の文化の中に漂う強い芯のようなものこそが美しいと思うし、憧れるところでもある(それは「和」というものが持つひとつの思想なのだ)。そして中原氏は、ご自身も、そしてその生活スタイルも、そして勿論俳句作品も、そのような強い芯を確かに宿している。そして、同時代で俳句に携わる人の中にそのような美しく強い芯を持つ和の佇まいの素晴らしい人物がいることに、やはり僕は安心を感じてしまうのだ。

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