2009/12/29
ブラヴォー、マスオ!
『サザエさん』という番組をご存知だろうか?
今のところ、ご存じない人と会ったことは一度もない。日本国民の多くが愛してやまないホームドラマだ。
原則として、日曜夕方放送。そのため、『サザエさん』を見ていると、明日が月曜であることを思い出したまらなく憂鬱になってしまう「サザエさん症候群」を生み出したことでも知られる。
しかし、原則として(また原則って書いてどうする)『ドラえもん』とならび、日本の家庭における精神のみそ汁とも言うべき作品。でありながら、私が声を小にして、「あんま好きじゃないっす……」と呟いてしまうTVアニメである。
私は人とは感じるツボがずれていて、ドラとサザエの面白さがよく分からないという困った人なの。なあみんな、それより『ウルトラセブン』を見ないか? う~ん、趣味が全然違うんだなぁ。
だが一度、いや一話、アウトラインだけを聞かされて、「ほぅ! その話なら一寸見てもいいかもしれないな」と思った回があった。実際には見てもいない上、うろ覚えすぎてこういう場所に記すのもなんなのだが、えぇいかまわぬ、やってしまえー(ちゃきーん)。ものども、であえ、であえーー。(と一声叫んだだけで、廊下から人が仰山出てくる。声がでかかったからとは言え、かなりまとまった人数がそろうのは驚くべきではないか。)
初めにお断りしておくと、これはうすらぼんやりした聞きかじりの記憶でしかなく、情報としては何ら効力を発揮しない話である。
サザエは、マスオと結婚した。主人公(?)最愛の夫・マスオ。けっこう重要なキャラクタァではないか。だがしかし、彼の扱いは、私が想像するよりずっと軽んじられているようだ。
サザエは結婚後も実家を離れず、マスオが磯野家に同居吸収されるかたちで、長きにわたり生活している。年の離れた義父母、癖の強い義弟妹(特にカツオは、二癖も三癖もあるガキ)と暮らせば、気づまりなことも多々あろう。けれども、マスオは特別耐え忍んでいるといった様子も見せないで、ちと変わったマイペース一家に溶けこんでいるのだから、なかなかよくできた性格なのだ。
時として、優しさを通り越して、少々気が弱いのではないかと思わせられることも少なくない。温和で気立ての良いお人ではあるが、いわゆるイケメン(死語かも。。。)でもないので、若干軽く見られてしまう傾向にある。
つまり、マスオは「いいひと」だ。「いいひと」、それもまた素晴らしい存在だ。努力してなれるものではない。金を積んでもなれるものではない。「いいひと」になりたくてもなれない人はたくさんいる。けれども、「いいひと」と言われるだけで、男が満足できるだろうか。私が男なら、「いいひと」で終わりたくはないと思う。きっと、男なら、男なりに、男として、アピールしたくなるんじゃないだろうか。
マスオもそう思ったそうだ。
ある日、彼は願った、モテたいと。願うくらいは普通だ。
妻サザエに秘密で、女にモテるための書籍を購入。これは、ちょっとだけ普通じゃないかも?
でも、まあモテたいからモテようと、まっすぐ奮闘を始めてしまうのである。決して成功しないのが、マスオのマスオゆえのマスオらしい悲しさというわけであるけれど。
いろいろやって、失敗を重ねて。最後に、マスオはモテようと努めるのを止めてしまう。行き着くべき真理を探り当てたからだ。マスオは知ったのだ。
ボクは、サザエにモテれば、それでいい――。
この結末に、疑問を持つ人もいるかもしれない。やめてしまうのか、あきらめてしまうのか、マスオ? と。
だが、私は手放しで叫ぼう。ブラヴォー! そうだよマスオ。それでいいんだマスオ。
そうだマスオよ。おまえにはサザエがいる。君は、そのことだけを覚えていればいいんだ。マスオには、サザエだ。サザエ一人がいるだけで、マスオは幸せになれる。彼女を得た以上、必要のない戦いに身を投じることはない。だって、サザエがいるんだ。他にモテようとすることなんてないじゃないか。モテるモテないで右往左往するのは、運命の女にめぐりあえない悲しい男たちの役目だ。マスオに、その必要はない。運命の女神サザエ。彼は彼女一人に跪くのだ。素晴らし~い!
これは、愛と感動の物語に違いないのである。違いある?
しかし案外、この真理に到達してからのマスオのほうが、女性にモテるようになるかもしれないな。
木谷梨子★
これまで名前の読み方を特に決めていなくて、「きたに」でも「こたに」でも、お好きなようにお呼びいただい...
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