2011/11/26
時は逝く/スコラ 坂本龍一 音楽の学校
本日26日、午前11:00~11:30、再放送有り。
・・・・・・・・
時は逝く。赤き蒸汽の船腹の過ぎゆくごとく、
穀倉の夕日のほめき、
黒猫の美しき耳鳴りのごと、
時は逝く。何時しらず、柔らかに陰影してぞゆく。
(……)
北原白秋
通い野良のチビの後ろ姿を、背後から静かに凝視していた。
夕刻に向けて陽は翳る。猫はまじろぎもせず、真剣に空の一点を…。
ふと、時間が停止したような錯覚があった。
「時が逝った」のだった。そして再び、流れる。
「赤き蒸汽の船」からいつも連想する絵があった。しかしそれは、じつのところ、「かはたれ」の曙の陽光の薄明に照らされた、マネが描く船影(「日の出 印象」)だった。
でも、私のなかではこのイマージュは「夕陽」として不動のものになってしまったようだ。
印象派といえば、「スコラ 坂本龍一・音楽の学校」(NHK)の「ドビュッシー・サティ・ラヴェル篇No4」。
坂本“教授”の『戦場のメリークリスマス』のテーマ音楽。坂本さんのその自作アナリーゼと、実演による解説。
平易でいてかつ、“教授”みずから自作をピアノに向ってアナリーゼしてくれるという贅沢。
坂本さんは番組前半で、エリック・サティの「ジムノペディ第1番」を一貫して流れる「七の和音」が音楽史上では革新的だったことから説き始める。そして、「七の和音」の発展系である、「九の和音」、「十一の和音」、「十三の和音」の説明をしつつ、バックには、曲中に「十一の和音」、「十三の和音」(ジャズで言う「テンション・ノート」)が偏在しているビル・エヴァンス(Pf)の美しいTime Rememberedが聴こえている。
そして、坂本さんによるMerry Christmas Mr.Lowrence(映画『戦場のメリークリスマス』主題曲)のPf演奏による分析と解説。
「ミ♭・ファ・ミ♭・シ♭・ミ♭ー/~ミ♭・ファ・ミ♭・ファ・ラ♭・ファ/ミ♭・ファ・ミ♭・シ♭・レ♭ー」。 この三小節間の有名な旋律は、各小節のバスのそれぞれの音(ソ♭→ラ♭→シ♭)に対して十三と七(第一小節)、九と十三(第二小節)、の和音を構成していることの説明がスリリング。
これらの「テンション・ノート」が、いかに非西欧的な音楽の響きがするか、分かり易く解説してくれる。第三小節目は、「シ♭・レ♭・ミ♭・ファ・ラ♭」の音の連なりに還元でき、これが「ペンタトニック(五音音階)」的で、「日本的なたとえばお琴の、あるいは、インドネシアのガムラン音楽などを連想させます」と。
曲調が変化させる次の部分からの(上記YouTubeでは0:48秒から)氏のピアノの音がきれいで、急いで譜面(写真)を見てしまった。
ここからは「九の和音」の連続。
まず、冒頭のバスのラ♭に対して、「(ラ♭)・シ・ナチュラル・ミ♭・ソ♭・(シ♭)」で、( )内の音が九度を構成している。
そして、三小節のバスのミ♭に対して、「(ミ♭)・ソ♭・シ♭・レ♭・(ファ)」。ここでも九度で、やはり「九の和音」。
そして、変化が起こるのが、第七小節目。突如、レ・ナチュラルとソ・ナチュラルが出現する(1:07秒)。
ここで坂本さんは、曲をドをバスとする十三の和音(ド・ミ♭・ソ・シ♭・レ・ファ)に転換する。つまり、バスのド、旋律のファの関係が十三度音程。九の和音と十三の和音の対比がある。
なおかつ耳を惹くのが、この、レとソ(基調の変ロ短調を構成しない、いわゆる「和声外音」)の音で、まるでフレッシュ・ジュースみたいに新鮮な音楽の転換が、すごく美しい。こんなところに坂本さんの作曲家としての感覚の鋭さ、その才能が現れていて、改めて脱帽。
・・・・21日付日記を更新。番組再放送の告知。
コメント(2)
2011/12/04
ネム うう、まだ録画した古典編をちびちびと見てるのですが、フランス編とても楽しみにとってありますが面白そうですね。ドビュッシーやラヴェルを聞いて「なんかお洒落な響きの和音だなぁ」と思ってたのがテンションノートの響きだったのですね。こう・・・和音に使うとお洒落に聞こえるのに、メロディーに使うとペンタトニック的な訛りに聞こえる、という違いが面白いと思います。
anoano ネム.様。私も前三回は録画したまま未見なんです。今、改めて気付いたのですが、「戦メリ」の主旋律が「平行四度」で動いていますよね(写真楽譜3段目の2、3小節目)。これもペンタトニックな訛りに聴こえます。果たして前三回のなかで“教授”がどう説明しているのか愉しみです。ネム.様もご覧になって下さいね。












