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万物理論(The Theory of Everthing)を巡るあれこれ

 今年の夏休みの読書計画の中には、ガルシア・マルケス『百年の孤独』の全面改訳版(何年積ん読になってたんだろう)とボルヘスの『七つの夜』が「お楽しみの列」に並び、これに、ここ数年難渋しているエジプト哲学のとある小冊子を選んだ。
 あともう一冊、ということで『物理学の未来』が付け足されたのは、危ういバランス感覚の所産である。結局、エジプト哲学は一歩も進まず(苦笑)。『百年の孤独』はほぼ真ん中あたりで続行中。読み終えたのは盲目のボルヘスの語り下ろしと、この『物理学の未来』をかろうじて。
 内容は、「物理学の夢である究極の(エレガントな)理論が確立されしだい、すべてがそれによって説明されるという古代ギリシャ以来の還元主義は誤りであり、われわれは漸進的に創発的な(emergent)法則の体系化に向かわなければならない」というもの。創発とは聞きなれない言葉だが、訳者の水谷淳さんのあとがきにある上手な説明をお借りすれば、「相対性理論や量子力学など、どんな理論も一個一個の粒子が持つ基本的性質ではなく」、「我々が考えているすべての理論は、物体が多数集合したことで「創発」する集団的な現象だ」、ということになる。
 この本自体は、相対性理論や「シュレーディンガーの猫」の創発的解釈から、物性物理の最近の大発見である量子ホール効果(欠陥が、測定の完璧さを「引き起こす」!)や宇宙論まで、各方面に題材を採ってボレロのように還元主義的発想を解きほぐそうとしているから、ある程度のボリュームになる。表現はかみくだいて「読める日本語」になっているが、正直、(劣等生でも)大学で物理学をかじったことが無いと、読み通すのは大変だろう。
 エッセンスだけを、というのなら著者のサイトに「The Theory of Everthing」と題された論文がいつでも印刷して読める形で登録してある(英文だが)のでそっちの方が手っ取り早いかも知れない。短いが創発主義の一種のマニフェストと呼べるもので、ひも理論や超ひも理論で、究極の真理に至ろうとする還元主義ベクトルを、なだめてくれる効果がある。

 万物理論といえば2年前に読んで面白かったブライアン・グリーン先生の『エレガントな宇宙』が思い起こされるのだが、ひも理論にせよM理論にせよ、そういった美しい究極理論がたとえ確立され実験によって検証されても、(物理法則の)創発の積み重ねで出来ている世界を説明し尽くすことは(原理的に)できない、というのがラフリンさんの主張なわけですね。ところで、グリーンさんといえば、米国のPBS(Public放送。これもNHKなんかと比較すると面白い仕組みですね)で、その名も「Elegant Universe」という3時間番組を切り盛りしたりして大活躍なのでありました。
 ちなみにThe Theory of EverthingでGoogle検索すると、こんな若手アーティストによるヴィデオ作品のサイトなんかも見つかったりで、なかなか楽しい。ちなみにこのサイトの中では山下麻衣さんの"When I wish upon a star"が可愛らしくて好きである。同じページの小林直人さんの"miracle"も同時に再生すると、なかなか味わい深い(笑)。次回はぜひ、創発をテーマに...。

万物理論(The Theory of Everthing)を巡るあれこれ

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Fallout
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