貴婦人Aの蘇生 小川洋子
「私」はロシア人の伯母さんと猛獣館で暮らす。
そこには亡くなった伯父が残した大量の剥製が所狭しと飾られている。
伯母さんは毎日、その剥製に「A」の刺繍をしていく。
Aとはアナスタシア皇女のA。
自分のイニシャルだと言う。
ロマノフ王朝の生き残り、アナスタシア皇女だと静かに主張する叔母。
そこに猛獣館の剥製が目当てでやってきたフリーライターのオハラ、私、私のボーイフレンドのニコが集まり、本物のアナスタシア皇女かの是非を巡り、物語が進んでいく。
作家、小川洋子の代表作は「博士の愛した数式」ですが、
その一つ前に発刊された「貴婦人Aの蘇生」を読むと、
作家が生み出す作品の流れを感じる。
「貴婦人Aの蘇生」を書いたから、「博士の愛した数式」が生まれたのが分かる。
2つの作品は設定、内容は全く違うのに、同じ匂い、温かさを感じる。
「博士の愛した数式」では
家政婦として働く私の視点で物語を読むか、
その息子ルートの視線になるかで小説の印象が違ってくる。
同じなのは誰になっても、博士に向けられる眼差しが優しく、博士を愛しているということ。
「貴婦人Aの蘇生」でもそれは同じ。
語り手の私でも、
強迫性障害を患っているニコでも、
フリーライターのオハラでも、
はたまた剥製インパラの視線でも小説は読める。
共通するのはユーリ伯母さんに向けられる優しい眼差し。
私は途中からオハラの視点になって読んでいた。
「何万という動物の目を見てきたから分かるんです。
これほど美しい青色の瞳を持つ剥製があったら、
どんな方法を使っても手に入れたいと願うでしょうな」
と言っていた彼が最後、
「瞳を見ていると、思わず手を差し伸べ、涙の泉があふれないよう、自分の胸に抱き寄せないではいられなかった。」
と打ち明ける。
彼の心を変化させたユーリ伯母さんの瞳には、いったいどんな力があったのだろう。私も見てみたい。
好き好きはあるけど、「博士の愛した数式」に負けず劣らず素敵な作品。
- 価格: 税込 1,470 円
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ISBN:
4022577002

商品を見る - 発売元: 朝日新聞社
- 年(代): 2002年02月
- 人名: 小川洋子
- 2006/09/18登録
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