ゼニスワイヤーラグ
Zenithワイヤーラグ
時計を巡る旅はまだ続いている。
懐中時計を手にして、ポーセリンと青焼きの針に魅了された。
これを腕時計で、普段使いできないものか。
そんなときに出会った時計。
スイス・ゼニス製のワイヤーラグ時計。9K金無垢・ポーセリンダイアルと青焼きのスペード針(ペアハンド)。
ポーセリン文字盤は懐中時計の全盛期には当然のように使われていた素材。
陶土を銅板に塗り高温で焼いたもので、長い年月を経てもその美しい白を保ち続ける。
だが、衝撃に弱く、割れやすいため、防水・耐衝撃といった新たな機能を追求してゆく腕時計の進化の中に忘れられていった。
懐中時計の技術の進歩による小型化と大量生産、合理主義と生活様式の変化。
様々な要素によって生まれた腕時計は、第一次世界大戦(1914-18)で軍用として使用されたことを契機に、広く一般に使われるようになっていった。
このワイヤーラグ(パリス環)ケースはそんな腕時計の黎明期、まだ「リストレット」と呼ばれていた時代の一つの典型的なスタイル。
小型の懐中時計にベルト通し具(ワイヤー)をただ、溶接しただけのような。
機能が様式に溶けゆく直前の、無骨な、デザインなきデザイン。
裏蓋裏に刻印されたホールマークによると、ケースは1933年、イギリスのバーミンガム。デニソン社製。
ムーブメントはCal.235?、15石。大きな駆動音。シリアル番号から一次大戦末期、1918年ごろの製造と思われる。
こちらで紹介されているムーブメントと同型。この頃のゼニスは軍用時計を主に作っていたそうだ。
ケースとムーブの15年の時間差については不明。(後年ケースが入れ替えられた可能性もあるが、1917年製造の同型ムーブメントを1936年にケーシングし販売したというゼニスの例もあるようだ)
ケースサイズは32ミリ。この時代のワイヤーラグ時計には細いラグ幅のものも多いが、これはラグ幅16ミリ。現代でも違和感なく使える。
金無垢ケースは派手、という先入観があったが、実際手にしてみると肌の色に近く、意外と馴染む。
また、貴金属ケースの時計にはきちんとしたグレードの機械を使っている可能性は高い。
ポーセリン同様、年月を経た腐食に強く、磨いても下地が出ないのも安心。
ebayストアで購入。地球の裏側、アルゼンチンからFedexでやってきた。経由地をHPのトラッキングサービスで調べたら、・・・
ブエノスアイレス(アルゼンチン)→メンフィス(アメリカ/テネシー州)Fedex営業所→アンカレッジ(アメリカ/アラスカ)Fedex営業所→成田空港→国内Fedex営業所
・・・という長旅の果てにやって来たのだった。
(手元にあるゼニス・スポルトもアルゼンチン出身。20世紀初頭には農牧産品供給国としてアルゼンチンは世界有数の裕福国だった。)
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参考情報:
懐中時計から腕時計へ リストレット小史(アンティーク懐中時計のページさん)
腕時計の黎明期を詳しく紹介されてます。
エナメルについて(仙台時計さん)
ポーセリンやエナメル技法について詳しく解説されています。
The Marks on British Silver(SilverMineさん)
銀のホールマーク判読表。タウンマークとイヤーマークは金も共通。
---2008/2追記
その後、オーバーホールついでにアンティーク時計店にて本格的な修理・調整。実用的に使えるようになりました。
ベルトも本来の引き通し型の物に交換。こちらの方が、時計も保護されるようで良い感じ。
最近になって、この時計は自分の父と同世代(一歳年上)ということに気がつきました。こちらは私自身の一歳年上。
並べてみると時計の機械/様式ともに、世代の違いが見て取れます。人間と同じように。
愛着とともに使っています。
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