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ジギャクノウタ

自虐の詩

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 作者:業田 良家

 「日本一泣ける文庫」と帯に書かれたこの漫画。おそらく、100人が読んでも100人が泣けるわけではないと思います。内田春菊氏の解説にもあるように、「想像力のない人は泣けない」のかもしれません。ただ、一方でこの漫画を読んで泣けない人というのは、かなり幸せなのかもしれません。

 上・下巻とあるのですが、ここではまとめて全部読んだあとの感想を書きたいと思います。というのは、上巻を読んでいるときはかなり退屈でした。これこそがマンネリズムといわんばかりのお決まりのオチ。ひたすら繰り返されるちゃぶ台返し。古い作品だし、こんなものかと思いかけました。だいたい、大げさに「泣ける!」とか書いてるものほど決まって泣けないものです。

 そんな状態で下巻を読み始めると、今度は作品に引き込まれて止まらなくなってしまいました。特に熊田さんが登場し、回想シーンが増えはじめるあたりからは時間がたつのも忘れるほど。

 自分が愛する人がいて、またそんな自分を愛してくれる人がいるというのがどれほど幸せなことなのか。また、自分と確かな友情を酌み交わすことができる親友というものはどれほどかけがえのないものなのか。だからこそ幸江はいま、自分は幸せだと言うことができるのでしょう。そして、それさえ超えて投げかけられるメッセージは「幸や不幸はもういい/どちらにも等しく価値がある/人生には明らかに/意味がある」でした。

 もちろん、幸か不幸かは大切だと思います。人生に意味があるかなんてわかりません。でも、僕が感じたのはそういった問題とは別のものでした。幸江さがんが幸せだと思っていれば、イサオが幸せだと思っていれば、熊田さんが幸せだと思っていれば、それはハッピーエンドなのでしょう。そして、それと同じように彼・彼女たちの人生には意味があるんでしょう。

 最初に、泣きそうになったのは熊田さんの路地の奥の後姿でした。その後、熊田さんと幸江が仲直りするあたりからどんどん目がうるんできて、最後の見開きはまともに読めていませんでした。上巻でひたすらくりかえされたマンネリがあるからこそ、ギャグだけれど実のところ「幸江なのに不幸」という設定があるからこそ、あの最後があるんだと思います。

 最初にも書きましたが、100人が読んで100人が泣ける漫画ではないと思います。でも、それでも一人でも多くの人に読んで欲しい漫画だと思いました。読んだうえで、どんな感想を抱いたとしてもそれはその人次第だと思います。でも、読んで欲しいと思える。そんな漫画でした。


自虐の詩

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