松井今朝子「仲蔵狂乱」
稲荷町(端役専門の役者)の身から、千両役者にまで上りつめた役者中村仲蔵の生涯を描いた小説。仲蔵というと忠臣蔵五段目の定九郎役の工夫についてのエピソードが有名で落語や巷談にもなっているが、この作品は孤児からのし上がっていく過程での困難や葛藤、芸での苦労を爛熟した江戸の文化を背景に描き出している。中村仲蔵の伝記小説としてはもとより、キッチリとしたけれんみのあまりない着実な記述で一人の役者の生き様やその周辺の人々を描き出す時代小説として成立している。
作者の松井今朝子は松竹でさまざまな芝居のプロデュースに携わったあと、ぴあの「ぴあ歌舞伎ワンダーランド」やCD‐ROM版の歌舞伎入門など、歌舞伎の入門書類では良質なものを送り出した人。だから、歌舞伎関係の記述については安心して読むことが出来る。今は歌舞伎からは距離を置いており、すっかり時代小説家であるが、また歌舞伎の仕事にかかわって欲しいと心より願う。
余談だが、松本幸四郎の「夢の仲蔵」シリーズ第一作目は、荒俣宏に脚本を依頼したところ、上演不可能な脚本が出来上がり、困ったスタッフは急遽、この本を参考に脚本を作り変えたらしい。
2007.7
作者の松井今朝子さんが「吉原手引草」で直木賞を受賞されました。おめでとうございます。
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コメント (2)
2006/10/26
祥 お。面白そうですね。中村仲蔵は浮世絵にもなっているし、世襲制度以外から出世したのはこの人の他に1名だけとか。すごい役者がいたんですね~。映像が残る時代じゃなかったけど、見てみたかったなあ…。荒俣宏の上演不可能な脚本というのも読んでみたいです。
2006/10/28
Rume この本は小説ですが、作者が作者だけにきちんとした評伝としても読めると思います。仲蔵は、声や台詞回しはイマイチだったけど、踊りは絶品だったようです。芝居町に生まれ、仲蔵の養母が踊りの先生だったこともでかいですね。養父は義太夫だったかな?現代でも、門閥外から歌舞伎の世界にはいる人は、舞踊の家のこだったり小さい頃から踊りを習っていたりすることが多いですね。荒俣の上演不可能な脚本って、どんなものだったのか。まあ、芝居を知らない人が書いたものなので、おいおいって、感じだったのでしょう。荒俣が普段お芝居を見ることもなさそうだし。
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