エドカブキヒワ
戸板康二「小説・江戸歌舞伎秘話」
高名な劇評家であり歌舞伎研究者でありながら、乱歩に推理作家の才能を見出された戸板康二による歌舞伎をテーマにした短編推理小説集。
戸板康二といえば、十七世中村勘三郎主演でドラマ化もされた、老歌舞伎役者中村雅楽の活躍する『雅楽シリーズ』が有名だが、この短編集は歌舞伎のちょっとした謎にミステリの形で解答するような形をとっている。綿密な考証がされているから、思わずそういうことだったのかと、もっともらしさに膝を打ちたくなるが、それはあくまでもミステリ的謎解きであって、もちろん歌舞伎史上の事実ではない。
しかし、考えてみると歌舞伎の重要な演目、曽我物や文楽から来た義太夫物の数々の演目は、徳川の世が作った歴史の裏側で、こういう裏の歴史があったにちがいない、こうあったら面白いだろう、こうあって欲しいという、言うなれば歴史的妄想力の賜物であって、それは歴史の歌舞伎的謎解きとも言えるだろう。そう考えると、ミステリと歌舞伎がそれほど遠く隔たったものでもないと思う。
歌舞伎の「車引」で、なぜ松王丸だけ白い襦袢なのだろうか?、歌舞伎のささやかだけど少し気になる謎が魅力的に思える方はどうぞこの本をお手におとりください。
と、戸板康二の歌舞伎ミステリについて検索していたところ、歌舞伎ミステリ物の代表作「團十郎切腹事件」が 創元推理文庫より中村雅楽探偵全集の一巻目として発売されるらしい。1,260円はちょっと高いが、出してくれるだけでも万々歳。
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中村雅楽探偵全集1『團十朗切腹事件』
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