「タッチタイプ」と「ブラインドタッチ」
キーボードの文字を直視せずに、手指の運動能力を最大限に生かして「自転車を漕ぐかのように、特段の意識をせずに」文字入力をする技法のこと。
自転車の乗用法習得と同じく練習が必要であり、また色々な事情により「いくつかの呼び名」があります。
(※以下、長文のため斜め読みを推奨します……。)
────────────────────
自転車に乗り慣れた経験がある方ならピンと来るはずですが、自転車の運転には2つの技能を組み合わせる必要があります。
一つは「漕ぎ方やバランスのとり方」といった「繰り返し習得して覚えること」です。これらは「自転車と自分自身」のみで完結し、外界からの影響をほぼ受けません(*)。「短時間に同じ操作を繰り返す」という特徴があり、目で確認せずに「体で覚える」という表現がしっくり来る操作です。
(*:システム内の要因……自転車が壊れた/自身の体調が悪いなどの要因に影響されることはあります。)
もう一つは「周囲の状況判断」という「事象ごとに異なる判断を必要とすること」です。これらは「自転車と自分自身」のみでは完結せず、外界からの影響をたぶんに受けます。「対向車(車)が来る/進行方向に障害物がある」などの状況は外界からもたらされ、それらは目や耳などから取り入れる情報を基に「毎回どうするかを考えて/半分反射的に」処理されます。こういう状況には常時かつ周期的に曝されるわけではないため、「目耳などで情報得て、頭で処理する」以外に解決方法がありません。
────────────────────
文字入力をタッチタイプ/ブラインドタッチで行う場合、前者の「体で覚える」部分が「キーボードを打つこと」であり、後者の「周囲の状況判断」にあたる部分は「変換操作・編集/推敲操作をすること」になります。
……さて、「体で覚える」という表現を表すには、「タッチタイプ」と「ブラインドタッチ」のどちらが的を射る表現になるでしょうか。
「ブラインドタッチ」では、「blind=見えなくする/日除け」という意味から連想されるとおりに「キーボードを目隠しして打つ」という操作を連想します。
それは「結果として、そうできるようになった」状態を指すには良いのですが、「練習中の状態」や「習得寸前の状態」を含めて指すにはちょっと弱い表現方法ではないかと思います(*)。
(*:「差別的な表現」だからダメ、とかいう指摘もありますが、それ以前の問題として「この操作」の本質をうまく表現し切れていない気がします。)
「タッチタイプ」では、「touch=触る/触覚」という意味があり、かつ「touch なんとか」という熟語には「直感」を連想させる熟語が数多くあるようです……それと、なぜか「喋る」という動作に似た雰囲気と語感があるような気がします。
「この操作」の最終的な到達点が「一つ一つのひらがなを、キーボードを見ずに打てるようになること」ではなく、「ひらがな単字のみではなく、頻出する単語のつづり方も指の動きのみで(*)打てること」にあることと合わせて考えてみると、「この操作」にあてられるべき真の名前は「ブラインドタッチ」ではなく「タッチタイプ」になるはずだよなぁ……と、私はそう思います。
(*:自身が良く使う2-gram~4-gramあたりの頻出語は「カナ単位」ではなく「語単位」で打っているはずです)
────────────────────
タッチタイプという技術は「必ず習得しなければならないのか?」と問われれば、それは必ずしもYesではないと思います。
既存のキーボードを使うもののみを取り上げるにしても、普通のキーボードに色をつけた、目に優しいキーボードを作成していたり、普通のキーボードを色分けして、50音順に指でたどって練習する方法が公開されていたり……と、色々な方法が提案され、実践されていたりします。
これらは「タッチタイプをしない方向け」を前提に設計されています。
結局のところ、タッチタイプは「やりたい人がやれば、それでいい」と思います。
────────────────────
ではその「タッチタイプ」、どうやって覚えればいいのでしょうか。
個人的には「増田式」を使った「Touch31」あたりが良さそうに思うのですが、「一般的に良いと思うかどうか」と「自分にとってできそうかどうか」というのは別の話でして……。
増田式練習法の本&情報処理論文については、後述の自作練習方法を構築した後になってから読んでみたのですが……一般的な方にとっては「十分に簡単」といえるレベルだと思うものの、私にとっては「まだまだ難しい」という感じがしました。
結局、私は「シャドー増田式」から増田式を除去して50音順練習に差し替えた「シャドー50音順式」を作成し使うようになりました。
増田式練習法が「階段の1段目」に当たるならば、[シャドー50音順式]は「階段の1段目にスロープをつける」感じでしょうか。
既存の練習法をアレコレと参考にして、「マイ練習法」を構築してから練習するのが一番良いのかもしれません。
練習法を構築しながら練習すると、自分にとって得意な部分を端折ったり、自分にとって苦手な部分を特に強調しつつ練習することになるので、練習時間に対する習得効率がより良くなると思われます。
────────────────────
入力法によって「タッチタイプでの打ち易さ」に差はあるのでしょうか。
日本語入力とは関係のない話なのですが、英語入力ではQwertyからDvorakに変えて世界最速記録が出た……という話があります。では「英語入力はすべてDvorakでやるべきか?」というと、案外そういう必要性があるわけではないらしく。
結局は、個々人にとって最もしっくり来る入力法を選択すれば、それでよいのだと思います。
英語入力では、こういった今までとは異なる理屈で入力法を設計する例があります。
また、たとえば中国語入力に関してもさまざまな入力法が紹介されています。中国語の入力に関しては、ひらがな入力の代わりとなる注音入力・ローマ字入力の代わりとなるピンイン入力・連想漢字直接入力・速記入力あたりが主に提案されている様です(間違っているようでしたらご指摘いただけるとうれしいです)。いずれも「最終的な出力結果は同じ=入力手順のみを変える」仕掛けであり、誤字脱字などからたまに推測できるという点を除けば、どの入力法を用いても最終的な出力結果には変わりがありません。
さて、日本語の入力についてこういった試みは行われていないのでしょうか?
……実は、日本語入力については100種類以上あります。
日本語の入力に関しては、ひらがな入力・ローマ字入力・連想&無連想漢字直接入力・速記入力あたりが主に提案されている様です。
携帯電話の入力法が比較的タッチタイプしやすいことからも明らかなとおり、入力するべき文字数が少ない場合は「タッチタイプしやすい=指を動かす範囲があまり広くない・入力規則が単純」が成り立ちます。
しかしながら、多量に文字入力を行う場合には「そのほかの条件(*)」も絡んでくるため、一つや二つの入力法で「すべての人が満足出来はしない(#)」ことになります。
「それぞれの人にとって、最も満足できる可能性がある入力方法」を探る動きは、これからも続きそうです。
(*:「左右の手で交互に打鍵する」「手を動かす範囲が狭い」「片手のハンドローリングを積極的に使う」「左右の手で対称に指を使う」などなど……)
(#:携帯電話用の入力法も色々あります。)
────────────────────
(2006年11月27日追記)
入力法によって「タッチタイプでの覚えやすさ」に差はあるのでしょうか。
確実にいえることは、次の点であろうと思います。
【デバイスのサイズや形状に見合った指使いをするほうが覚えやすい!】
──携帯電話ならば一本指、電卓やテンキーならば片手5本指、キーボードならば両手全指……といった感じで、「デバイスの制約が許す範囲内で、なるべく一本の指が負担するべきキー数を少なくする」ことがポイントです。
【覚えるべきボタンの数は、少ないほうが覚えやすい?】
──ボタンの数は、少なければ少ないほど覚えやすくなります。たとえばパソコン用のキーボードを使う場合、「数字段を使う入力法」よりは「数字段を使わない入力法」のほうが習得しやすくなります。
ただし、「数字段を使わない入力法」は「数字や記号類を打ちやすくするためにその段を空けている=数字もタッチタイプできないと、わざわざ数字段を使わない入力方式にする意味がない」という意味を含んでいます。
つまり、「パソコンのキーボードを使う限り、どの入力法を使う場合であっても覚えるべきボタンの数は同じ」ということです。
【覚えるべき手順の数は、少ないほうが覚えやすい?】
──JISX4063綴りローマ字入力の場合、拗音類を含めると192ぐらいの定義を覚えることになります。小さな文字をすべてX前置の単独で出す場合は、NICOLAと同じく90ぐらいの定義を覚えることになります。
NICOLA(親指シフト)などでは、清音と濁音と半濁音をそれぞれ別々に覚えることになるので、出力可能な文字数と同じ90ぐらいの定義を覚えることになります。
JISかな入力と新JISかな入力では、濁音は濁音キーを後置・半濁音は半濁音キーを後置するので、清音キーと濁音化キー・半濁音かキーなどを覚えるだけなので、全体では63ぐらいの定義を覚えることになります。
──「JISかな入力と新JISかな入力」では、濁音キーと半濁音キーを単独で覚えて使うことも可能ですが、慣れていくにしたがってこれらの操作は「清音キー+濁音キー」なり「清音キー+半濁音キー」という風に、一連の指の動きとして記憶されていくことになります。
また、「JISかな入力と新JISかな入力とNICOLA(親指シフト)」では、拗音節などを入力するための小書き文字入力を単独で覚えて使うことも可能ですが、慣れていくにしたがってこれらの操作は「清音・濁音・半濁音+小書き文字」という風に、一連の指の動きとして記憶されていくことになります。
さらに、「JISかな入力と新JISかな入力とNICOLA(親指シフト)とJISX4063綴りローマ字入力」では、高い頻度で用いる「です。/ます。/ますが、/なの/ので」などの文節を入力するためのかな入力を単独で覚えて使うことも可能ですが、慣れていくにしたがってこれらの操作は「よく使う一続きの文節を一気に打つ」という風に、一連の指の動きとして記憶されていくことになります。
──最終的には「高い頻度で用いる文節が快適に打てる入力方法は快適」という結果にたどり着きそうな気がします。
ローマ字入力法では「かな入力に比べて打鍵コストが増えることを承知のうえで、可能な限り左右交互打鍵になるよう設計をする」設計をとる例が多いようです。
かな入力法では逆に「ローマ字入力に比べて左右交互打鍵になるよう設計をすることが困難であることを承知のうえで、可能な限り打鍵コストを減らす」設計をとる例が多いようです。
問題は、そこに行くまでに何ステップを経るか・どういう経路でたどり着くか……というあたりになりそうですね。あとの選択は個々人のお好みに合わせて頂ければ、それでよいような。
【覚えるべき手順の一つ一つは、短いほうが覚えやすい!】
──極端な話、何十個もキーを打ってようやく文字が出るよりは、一つか二つキーを押せば文字が出るほうが楽ですよね。
シンプルなリアクションでシンプルに文字が出る……そのほうが、仕掛けが単純なだけに覚えやすいはずです。
【整理された学習法や、自分に合う学習法を利用するほうが覚えやすい!】
──独力で練習すると、時として「他の誰かが既に陥ったワナにハマってしまう」場合があります。
そういうことを防ぐには、「他の誰かが既に陥ったワナ」についての検討が既に済んでいる「罠にハマりにくい学習法」を選択するほうが手っ取り早いようです。
【自分の「リズム」に合う文字入力法を選択することが一番重要!!】
──日本語入力法には、大雑把に分けて「ローマ字入力系」「かな入力系」「漢字直接入力系」「速記入力系」の4種類があります。そして、これらの中にさらに色々な分類があって、少なくとも100種類以上の入力法が存在します。
これらのうちどれか一つや二つのみでは「まるで用を成さない」理由は、もしかすると「【自分のリズム】に合う入力法が、人それぞれに違う」からなのかもしれません。
タッチタイプによる文字入力では、時には筆記のように・時には口述のように……さまざまなテンポ・リズムで打鍵されます。
自分自身にとって「すばやく打ちたい語はすばやく打ち切ることができ、それでいて普段は指が痛くならず疲れにくい」入力法が、きっとどこかに眠っているはずだと思います。
タッチタイプの「覚えやすさ」については、上記項目で述べたとおり「必ずしも機械的に・全員に当てはまる条件があるわけではない」特徴があります。
ろくに発見のない入力方法を選択してダラダラやっていると「つまらない→興味が持続しない→普段使いする気になれない→いつまで経っても覚えられない」という事態に陥る可能性があります。
人間が持つ「直感」というものには、面白い性質があります。
練習中に「面白み」を感じることができない入力方法というのは、最終的に「習得しても満足できない」という結果へと至りがちです。もちろん、それが「職業上仕方なく覚えなければならない技能」であるならば、我慢してでも覚えるべきでしょうけれども……それ「だけ」に頼る必要はないと思います。
そんなときには、他に「面白み」を感じた入力法を練習してみると良いかもしれません。
────────────────────
どうしてもタッチタイプが出来なくて、でもタッチタイプをしてみたくて……とお悩みの方は、「練習方法を見直す」とか「入力法を変えてみる」とかいう方法について検索してみると良いかもしれません。
Google 検索:「ブラインドタッチ タッチタイプ」
えもじならべあそび 検索:ブラインドタッチ
- 2006/11/28更新
- 2006/11/26登録
- 3516クリック
このキーワードはコレクションに選ばれています(2)
- メイン
- コメント(1)
- つながり(8)
- トラックバック(0)
つながりキーワード (8)
ポケベル入力(ポケットベル入力方式)
- (相沢かえで)
すでに15年近くの歴史がある、ポケットベルと携帯電話における文字入力方法。 http://d.hatena.ne.jp/keyword/... 携帯電話で一般的な「かなめくり入力」と比...
かえであすか(親指シフト系)
- (相沢かえで)
パソコンやPDAなどを使った、日本語入力法の一つ。 飛鳥カナ配列(親指シフト系)の私製異版で、飛鳥カナ配列の規則をなるべく生かしながら、日本語電子タイプライタ「OAS...
日本語電子タイプライタ「OASYS」
- (相沢かえで)
日本語電子タイプライタに搭載されていた入力法「親指シフト(NICOLA)」の入力法を、Webブラウザで簡易的にご覧頂くことができます。 http://www.eurus.dti.ne.jp...
JIS X6002「かな」配列の命運
- (oyaoya ♪ )
世の中、ローマ字入力が圧倒的…、「かな」なんかいらない? じゃ、見向きもしないJIS X6002「かな」配列って一体何なの! キーボードに「刻印」する必要ないんじゃん?...
Nicolaをマスタ-する
- (oyaoya ♪ )
Nicola(親指シフト)とは? ワンタッチキーボード、親指シフトキーボード、指でしゃべるキーボード、そしてOASYSキーボードとも言う。 キーボードに手をおいて、親指位...
ワープロ専用機と親指シフト
- (oyaoya ♪ )
<親指シフトの由来> ※は筆者が記した ワープロとして、一時期日本(※企業)の約70%のシェアを誇った富士通のOASYS用として開発された日本語入力キーボード規格の名...
100%ワンアクション入力
- (oyaoya ♪ )
キーボードはパソコンに付いてるものでいい、な~~んて思っている人はそのまま使えばいい。この空間を読む必要はありません。 でも、入力に疑問を感じている人、もっと楽にならない...
飛鳥カナ配列(親指シフト系)
- (相沢かえで)
※飛鳥での打鍵動画にて、実際に「飛鳥カナ配列」を使って文字入力している様子をご覧頂くことができます。 下の説明はあくまでも補足なので、動画をご覧になった上で読むかどうかをお決めいただけれ...



東プレ Realfo...
東プレ Realfo...
MacBook
Ajax IME: Web-b...

