関心空間はグルメのクチコミも満載!

新着

... もっとみる
ログイン | ユーザー登録(無料)

ドゼウナベ

泥鰌鍋

  • 泥鰌鍋の画像

「仏」もいれば「福」も来る。「大和」を訪ねようが「蝦夷」に行こうが、「縞」柄を着た奴もいれば「筋縞」模様が好きな奴もいて、総じて「味旨」である。それが泥鰌と云う愛すべき生き物に付けられた名前で、これが梅雨明けの頃になると江戸っ子にこよなく愛されたそうで。今では年間を通じて手に入るので、どちらかと云えば寒い時期の方が身体が暖まって旨さが増すように思えますけれども。

炭を熾した七輪で「丸」や「丸抜き」鍋をグツグツ煮ながら薬味の葱をたっぷりと放り込み、クタクタになった葱と泥鰌に好みで山椒や七味を振りかけて戴くって寸法ですが、昔から木箱に入った葱と出汁はお代り自由が慣わしで、貧乏人の江戸っ子は出汁をたっぷり吸った葱ばかり喰ってそれを酒肴としたんだそうで、それでも嫌味ひとつ口にしない店が流行ったのは云うまでもございません。

また、酒を呑む時にはあらかじめ泥鰌汁を一杯腹に収めておくと悪酔いしないで済むってな言伝えが古くからありまして、鍋が煮えるまでは泥鰌の唐揚や泥鰌汁を肴にぬる燗などをチビチビ呑んで時が至るのを待つのが御定法だったそうですけれども。

日暮しや 煮物がわりの 泥鰌鍋     万太郎

なんてのは庶民の暮らしぶりですが、吉原遊郭で愛しい相方を待つ女郎が詠いますと

ヌシはいま 駒形あたり 泥鰌鍋

なんて粋な歌になるんで、こちらの方が遥かに風情があります。今日では駒形は越後屋助七の「駒形どぜう」・浅草の「飯田屋」・高橋(たかばし)の「伊せ喜」・両国の「桔梗屋」あたりが有名なんでしょうが、昔は南伝馬町に「萬屋」・横山町に「柳川」なんて見世もございまして、大川(宮戸川)を挟んだ両岸に泥鰌を商う処が多かった。

「あ~ら若旦那 今朝はえらく早いんですねぇ」
「朝っぱらから誰かと思えば お澄姐さんじゃありませんか」
「今日はマトモにお仕事ですか?」
「ありゃま どうも初手から手厳しいお言葉で」
「だって若旦那が朝早くから反物背中にしょってるのを見たら 誰だってそう思いますよぅ」
「不肖アタクシも世間では七代目中村屋平蔵を名乗っておりますれば 額に汗して働くのが務めと言うものでゴザイマス」
「何を云ってんだかねぇ どうせ昼には馴染みの船宿で 田楽でも肴に一杯呑ってんでしょうに」
「こりゃまた随分のお言葉で」
「暮れるのを待って舟ぇ出して 見返り柳にご挨拶ってんでしょ どうせ」
「そりゃ あ~た 丸っきりの濡れ衣で」
「幾ら云ったって駄目だよぅ 顔に書いてあらぁな」
「わかります?」
「だから若旦那は莫迦だっての」
「でもね 今日はチョイと河岸替えてみたいン」
「ってぇと 柳橋とか吉町とか?」
「いえね 馴染みの船宿で泥鰌鍋って絵図面で」
「それじゃあ 両国かい それとも駒形?」
「お届け先が両国で」
「だったらアタシもよ ほんの挨拶だけで済むン」

なんてな噺で武州豊多摩郡中野村桃園を連れ立って出た二人は、青梅街道は成子坂を下って内藤新宿の大門を過ぎ、矢来町から横寺町を廻って神楽坂毘沙門天様を横目に見ながら昌平坂まで一気に歩き抜け、辰の刻には大川の袂に着いた。互いの用件を済ませて落ち合った二人は船宿の二階に上り込み、泥鰌鍋を挟んで注しつ注されつ半時ばかりを過ごしたそうで、最後の仕上げに残った汁を玉子で綴じた。

酔うて乱れた 襦袢の奥は
  とじてもくれぬ 夜半の月

この身は骨抜き 煮えたぎらせて
  きみをとじたる 禰宜にはあらねど

ご先祖様の行状が果たして本当にこのようなものだったかどうか。今となっては知る由もゴザイマセンけれども、血筋だけは侮れないと云うお粗末の一席 (笑)

泥鰌鍋

このページに
携帯でアクセス

2次元バーコード対応の携帯で読み取ってください

涙腺子画像 投稿者:
涙腺子

このキーワードはコミュニティに選ばれています(2)

コメント (6)

最新コメント5件

2006/12/13

Poughkeepsie なんとも艶っぽい会話、ごちそうさまです(笑) どぢやう初体験でしたが、舌も肝臓も大満足でございました。ここで触れるべきところ、話を横道に逸らしてしまい、どーもスミマセン(ぺこり)

2006/12/14

涙腺子 艶笑噺ってのも「お題」に沿って作るとなると中々に難しいもんで、最後の都都逸も自家製を対にして丁稚上げてみましたが、男女の距離感や色香が何処まで匂い立ったか、経験不足のアタクシとしてはまったく自信がございません(笑) 

夜の撃墜王 最近、起承転結が纏まりすぎちゃって、コメントを挟むのが難しいです。笑 とりあえず、先日の泥鰌はごちそうさまでした。

涙腺子 スミマセン(笑) 或るセラピストに聞いた所、ボクのような脳波異常人間ほど表向きは型通りと言うか、正常を装った文章を書くそうです(笑)

2006/12/16

grover 泥鰌、本当においしかったです。味を語感で判断してはいけないと反省しました。実は、仲間内に忘年会は泥鰌を提案したのですが、何もしらなかったときの私同様、「えー、泥臭そう。おいしいのぉ?」と想定内の反応。

つながりキーワード (0)

まだキーワードがつながっていません。

携帯でこのページにアクセス

泥鰌鍋

2次元バーコード対応の
携帯で上の画像を読み
取るとアクセスできます

トラックバック (0)

まだトラックバックされていません。

トラックバックURL
http://www.kanshin.com/tb/keyword-1061109

キャンペーン


ロケットニュース24

未来検索 ガジェット通信
ページの先頭へ ページの先頭へ