一瞬の風になれ
有望なサッカー選手の兄を慕う一方で
コンプレックスを持っている神谷新二。
天才的な運動神経を持ちながらも
勝負に執着がなく続かない一之瀬連。
二人の幼馴染が高校で陸上部に入部してからの三年間を描いた青春陸上小説、全三巻。
いや~、ものすごい勢いで2日で読んでしまいました。
主人公の新二がすごくいい奴で、
彼の視点にどっぷりハマってしまい、
連への憧れ、先輩後輩への思い、兄へのコンプレックス、
まるで全て自分が感じているかのようでした。
新二と連の短距離と400mリレーが話の中心ですが、
才能をもつ二人でも大会ごとに波があったり故障したり・・・
うまくいったりいかなかったりが、とてもリアル。
(兄が中高陸上部だったのでなんとなく分かる)
活躍する主役の二人ももちろん魅力的ですが、
それ以上に脇を固める登場人物たちの描写が泣ける!
まじめな部長の守屋さん・・・
引退のシーンは部の皆と一緒に泣きました。
最初から最後まで部と二人を支えたネギ・・・
3巻の関東リレーで自分が出るか出ないか、
そこでの男気にきゅんと来たぜ。
健気でムードメーカーのモモッチ・・・
新二と連にはさまれたリレーの3走は大変だったよね。
弱音を吐かず頑張る彼にも感動。
いつもはゆる~く、決めるときは決めるみっちゃん・・・
あなたあっての春高陸上部です。
他校のライバルであるモンスター・仙波や
敵か味方かわからないくらいフレンドリーな高梨、
彼らもとても魅力的。
登場人物すべてがすてきで、輝いて見えます。
何かにひたすら一生懸命になってる人ってすばらしい。
まるで、自分も部の一員であったかのような感想が湧き上がる。
誰も特別なことを言わない。
等身大の高校生から出ることばしか描かれない。
だからこそ、
《跳ぶ奴、投げる奴、走る奴、いいぞ、みんな。》
なんて新二の普通のことばに胸を打たれる。
ラストにちょっと消化不良の感はありますが
(谷口と新二の恋はどうなるの!?インハイは!?)
それでも充分読む価値があります。
とてもシンプルで素直で、一年間のぐちゃぐちゃがたまってる人は
年末年始にこれを読んでリセットするのもいいかも。
佐藤多佳子『一瞬の風になれ』1~3巻 講談社 2006年
- 2006/12/12更新
- 2006/12/12登録
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