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新JIS配列(JIS X 6004、新JISかな入力)

 1980年代近傍に生まれた「かな入力3部作」(親指シフト・新JISかな・TRONかな)の一つ。

 「人差し指最強伝説(最速伝説?)の継承」「配列設計時にタイプライタズレがない鍵盤を用いていた」「そもそも打鍵データ収集のために親指シフト似の鍵盤を使っていた」――と、実は割と親指シフトに近い成り立ちを持つ入力方法だったりします。

 また、「3年間にわたって指の運動特性を研究し、その成果を反映させた」「既存のけん盤配列から物理形状を変更せず、ソフトウェアの追加のみで実装可能な改善案を提示した」「コンピュータによる配列設計はほどほど(片手につき256パターンまでに絞るところ)で切り上げて、最終的な評価は人力による打鍵評価により行った」など、(親指シフトからさらに歩を進めて)極めて近代的な設計指針を取ったという特徴もあります。
 (親指シフトは日本語電子タイプライタ「OASYS」の「部品」として短期間に設計された(普通の鍵盤にたどり着くまでは長く、普通の鍵盤での試行錯誤は2ヶ月弱程度)ことと比べて、新JIS配列は20倍近い時間を掛けて製作されました)

 一番の特徴は、これら「指の運動特性」と「文字の出現頻度」に関する研究成果をまとめた文献が一通り公開されていて、誰でも自由に参照できるということでしょうか。新しい文字入力法を設計するのならば、一度は読んでみる価値があると思います。以下に文献情報を記したページを示します。
 http://ja.wikipedia.org/wiki/...
 「数字段(一番上の段)を使うと、入力速度が遅れがちで、入力誤りが多くなる」とか、「シフトキーを絡めた操作については、シフトのコストが文字キーの半分程度で済む」という事柄を実験経由で証明しているなど、この手のことに興味がある方にとっては十分に楽しめる内容となっているはずです。

 親指シフトには、「濁音は清音の裏(濁音かなを入力するときには、反対の手で親指シフトキーを一緒に叩く)」というルールがあるので、必然的に「濁音になりうる清音は表(シフトせずに打つ面)にしか置けない」という制限があります。
 一方で新JISでは「濁点は右手」というルールがあるので、必然的に「濁音になりうる清音は、なるべく左手側に置く」という制限があります(おなじ理由で、JISかな配列(JIS X 6002)も濁音になりうる清音を左手側に多く集めています)。
 新JISの調査では「最もよく使うキーシーケンスは【か】→【゛】」「左手→右手の順で交互打鍵するのが最もすばやく入力できる」という実験結果があり、それを生かすために「【か】を左手に、【゛】を右手に置くことは絶対条件として設計を始めた」という事情があります。
 タイプライタのように打鍵できることを目指して設計されたためか、【、】【。】は刻印があるキーをそのまま押すだけで入力できるようになっています(【、】【。】の位置はQwertyローマ字入力・Qwerty英字入力と同じ)。これは「【゛】が右手にあるので多くのかなが左手に寄り、結果として右手側に置くべきかながあまり多くならなかった」という点がうまく働いたのかもしれません。

 新JISかなでは「小指シフトキーを使う頻度が、もともとのJISかなと比べて極端に高い」と誤解されがちですが、この指摘はほとんど的を射ていないのが実情です。正確に言うならば、「小指シフトキーを使う頻度が、もともとのJISかなと比べて【若干】高い」というのが適当だと思います。
 JISかなにおいてシフトキーを併用する文字は【ぁぃぅぇぉっゃゅょを、。・「」】であり、新JISかなにおいてシフトキーを併用する文字は【ぁ゜ほふめひえみやぬ「ぃへらゅよまおもわゆ」ぅぇぉねゃむろ・ー】です……文字数だけを見ると「新JISかなは膨大なシフト操作を必要とする」様に思われがちですが、実際に増える操作回数は数パーセント程度となっています。
 http://www.asahi-net.or.jp/...
 理由はカンタンなのです。JISかなでは、使用頻度が比較的高い【っょ、。】までもがシフト側に回っていましたが、これを新JISかなではシフトなしで操作できるようにして、代わりに使用頻度が低いかなを一切合財シフト側に回してしまったわけです……差し引きで数パーセントしかシフトの操作回数が増えていないのは、こういった「統計を元にした文字の差し替え」の成果というわけですね。

 新JISかなの設計思想は、当時のハードウェア的な制限や、あるいは設計者の方の思い込み(?)もあってか、完全にはその「本当の姿」を生かしきれなかった部分があるのかもしれません。
 とはいえ、新JISかなは確かにリリースされ、そして一定の評価を受けるに至りました。

 文字配列の並びが難解であることとは対照的に、設計方針そのものの健全さ・解りやすさに対する評価は今もなお健在です。
 とくに「シフトキーを文字キーと同じように、単独で打鍵して操作できる」という特徴は、後に「花配列」が採用した「中指シフト方式」との整合性が良く、これらをくみあわせた「月配列」という配列群へとつながっていきます。
 http://jisx6004.client.jp/tsuki.html
 新JISかなを語る上で槍玉に挙げられがちな「小指シフトの操作」が不要になったことで、新JISかなが持つ本質を「より解りやすく」表現できているのではないかな……と思います。

 月配列は固定された配列を持たず、それぞれの配列屋が「My月配列」を製作する例もあります。
 また、その製作過程でたくさんの「かな頻度順データ」「かな連接順データ」が提示されるなどした経緯があり、これらのデータはのちの「(月配列に限らず)My配列」に対して大きな影響を与えるに至りました。

 わたしは、「かな入力」というものを見直すきっかけになった&「かな入力」の魅力を存分に引き出して見せたという意味で、「月配列」とその本流である「新JISかな」の存在は非常に重要なポジションを占めていると確信しています。
 「かな入力を弄る面白さ・かな入力を作る面白さ」は、「とても複雑なパズルを自分なりにジグソーで切って、自分なりに組み立てていく」ことと似た、とても知的な作業だと感じています。
 そういう意味で、あえて「既存のキーボードをそのまま生かす」選択肢を取ってみせた設計者の意思は、四半世紀を経たいまになって、もう一度見直されるべきなのかもしれません。

 新JISに限ったことではありませんが、今まで設計されたそれぞれの入力法が、本当の意味で正当に評価されるときが来るまでに、これからいったいどれほどの期間が掛かるのかは不明ですが……いずれにせよ、そういう時代は世代交代と同時に来るのではないかな……と、そういう予感がしています。

 ちなみに、 新JISかなとはちょっと違うのですが、「月配列」を通して新JISかなの姿を「打って試して確かめる」ことが出来ます。
 以下のPDFにある「P.8」には、「月配列2-263」を50音順に練習するためのテキストを収容しています。
 http://www.eurus.dti.ne.jp/...
 「月配列」を使うための方法については、以下のページに解説があります。
 http://jisx6004.client.jp/tsuki.html

新JIS配列(JIS X 6004、新JISかな入力)

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相沢かえで
  • 2006/12/20登録
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