イエス・キリスト
イエス・キリスト
「イエス」または「ジーザス」(英語読み)、「イエズス」(カトリックとか東方教会ではこの呼び方も使われていたと記憶しています)。クリスマスで記念される人です (笑)。
キリスト教徒の私にとっては、私の救い主です。何から救ってくださったかというと、私自身の「どうしようもなさ」、つまり「罪」です。どうしょうもない私を生かしてくださる方こそイエス・キリスト、なのです。
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ところでこのキーワードを登録した今日はクリスマス・イブですが、クリスマスが一応キリスト教の記念日のひとつであることが知られていないことも少なくないうえ、クリスマスが何の日であるか、またイブとは何なのか、キリストとは何なのか、案外誤解があるようです。
まず、クリスマスは「イエス・キリストの誕生日」ではありません。え? と思われる方も多いと思いますが、イエスの実際の誕生は5月頃といわれています (正確にはわかっていません) し、聖書のどこにもイエスが12月25日に生まれたという記述はないのです。そもそも、12月のイスラエルは極寒ですから、そんな中で、暖房もろくにない馬小屋で生まれた赤ちゃんが寒さに耐えられるか、はなはだ疑問です。実は、もともとはエジプトの太陽信仰の祭日と結びついた結果、クリスマスがこの日に落ちついたと言われています。というわけで、クリスマスは「イエス・キリストの誕生を記念する日」であります。
それから、よく12月23日を「クリスマスイブイブ」という人がいますが、これも間違いです。イブとは「当日の夜」という意味です。ですから、「クリスマスイブ」も「クリスマスイブイブ」も、「クリスマスイブ×100」も、強いて言うなら12月24日。ではなぜクリスマスは25日でクリスマスイブは24日なのか。実は、ユダヤでは日没と同時に次の日がはじまるという考え方をしていたのです。ですから、現代人の感覚では「24日の日没後」が、当時のユダヤの感覚では「25日のはじまり」となるわけです (『創世記』でも「朝があって、夜があった」ではなく「夜があって、朝があった」のです)。
最後に、「キリスト」とは苗字ではなく、「救い主」(原意は「油注がれた者」) という意味の称号です。当時のユダヤには、苗字がそもそもありませんでした。家をあらわしたいときは、「○○の子○○」という呼び方がされます。ちなみにイエスは「ヨセフの子イエス」です (処女降誕を信じるのであればヨセフとは血のつながりがないことになりますが)。
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蘊蓄はこれくらいにしましょう。キリスト教的な意味は、詳しくはお近くの教会に聞くなり、聖書を読むなりしていただくとして、私が今日、礼拝に出ながら思ったことを少し書こうと思います。
人間というのも、どうしょうもないほどバカな生き物だと思いますが、神のバカさ加減は、人間のバカさ加減を上回っていると思うのです。何も、十字架につけられるために生まれてきて、そのことを救いのしるしとしなくたっていいじゃないか。もうちょっと、権威を示しやすい方法だってあったじゃないか。無名の貧しい家に生まれて、大工の息子と蔑まれて、「私は神の子だ」とかわけのわからない、しかも言わなくてもいいことを言ったがために (ユダヤ人にとって、神の子を自称することは神への冒涜に等しいのです) 十字架につけられ、すべての人に裏切られ (「裏切り者」といえばユダを思い浮かべる人は多いでしょうが、彼が最も目立っただけの話で、本当は12弟子の全員が、イエスを裏切ったのです)、殺されました。復活だってかなりなさけない。復活してしばらくの間は、自分がイエスであることすらわかってもらえなかったじゃないか。あー、バカだバカだ、この人は。いろんな宗教が神の子や神の代理人や救い主を自称していますが、もうちょっとマシな救い主にはなれなかったのか。
でも。
こんなに律儀に人間を生きた神もいないでしょう? わざわざ赤ん坊になったのです。それも、立派な家で生まれたのではなくて、宿屋にも泊めてもらえずに、馬小屋 (実際にはロバ小屋だろうと言われていますが) の中で生まれた。おまけに、処女降誕の真偽はともかく、母マリアは婚約者ヨセフ以外の男と寝たのではないかと疑われていました。さらに、一歩間違えたら、自分ではどうすることもできずに殺されるかもしれない (というか、実際に殺されかけた)。貧乏で、貧相で、多少の筋力 (大工ですからね) と多少の奇跡と、品性のよさ以外に何のとりえもない、権力もない、お金もない、さしてかっこよくもない男になってまで、人間に共感しようとした神なのです。そこに共感する人が、キリスト教徒として、このバカみたいな男の死後、2000年ものあいだ、絶えることなくあらわれつづけたのです。
直接彼を死に追いやったのは当時の人々の身勝手さ、どうしょうもなさです。そして彼は、周囲の人たちの身勝手さやどうしょうもなさをあえて受け入れて、死に追いやられることを選びました。苦労して育ち、生活してきた彼は、身勝手にもなりたくなる気持ちがやはり痛いほどわかったからなのでしょう。でも、残念ながら、その身勝手さやどうしょうもなさは、やはり私にもあるのです。私がもしその当時を生きていたならば、彼を殺さない側にまわれた自信は、きっぱりと、ありません。
一方で、人間は誰かに裏切られたりもします。すべての人に裏切られた彼は、裏切られる辛さも知っています。だからこそ私たちは、たとえ孤立しても (同志のはずの、周囲のキリスト教徒にまで敵対されても)、その辛さを知っている人がいることを知っているのです。
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「言 (ことば) は肉となって、わたしたちの間に宿られた。」(『ヨハネによる福音書』第1章14節の一部) といいます。神 (言) が人となって、わたしたちの間に生まれたということです。そして、当時も、そのことを知った一部のユダヤ人は、その赤ん坊を見るために集まってきました。
このクリスマスイブは、教会に多くの方が集まります。普段はわずかなキリスト教徒と非キリスト教徒しかいない教会に、多くの非キリスト教徒が集まります (ちなみに私の教会も満杯でした)。「クリスマスくらいは、そもそもの由来であるキリスト教にふれてみるのも悪くないだろう」と思う方もいれば、「静かな雰囲気が好き」と思う方もいるでしょう。
私はそれでいいと思います。イエスの名のもとに人が集まる、ということが大事だと思うからです。
今日、教会にいらっしゃた方は、『もろびとこぞりて』を歌われただろうと思います。その歌詞の中に「平和の君なる御子を迎え」とありますが、きっと、教会を出たあなたの肩に、そこで歌われた「平和」が、たぶんダウンジャケットからこぼれ落ちた羽のように、ふわりとついていると思います。その平和を、ふりおとさずに持ち帰ってくださいますように。
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