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μTRONキーボード&TRONかな配列 (マイクロ トロン キーボード ト トロン カナ ハイレツ)

 TRONキーボードのサブセットである「μTRONキーボード」は、かつて販売された「TRONキーボード」の弟分に当たる品物です。
http://www.personal-media.co.jp/...
http://ascii24.com/news/i/topi/...
http://internet.watch.impress.co.jp/...
http://release.nikkei.co.jp/...

 TRONキーボードの実物は、↓の「図 7 TRON 仕様キーボードとタッチパネル」にチラッと写っています。
http://www.sakamura-lab.org/TRON/...
 また、ここからタブレットを除去した「TRON仕様に準拠したキーボード」は、かつて「たのみこむ」から製品化されたこともあります。
http://www.tanomi.com/shop/admin/...

 「μTRONキーボード」と「μ」が付いているのは、TRONプロジェクトおいて「サブセット」品を規定する場合のお約束で、今回のキーボードは「TRONキーボードではない」が「μTRONキーボード」ではある……と、そういう事情によるものです。
 この命名規則については、「BTRON スーパー・パーソナル・コンピュータ(1985年3月28日)」の最終ページをご覧頂くとピンと来るかもしれません。
http://fw8.bookpark.ne.jp/cm/ipsj/...
 つまりこのキーボードは、TRONキーボードの中から「絶対に譲れない部分のみを抽出して製作した」ものである……というわけです。

──────────────────
 このキーボードについては詳細が良く解らない(注:このキーワードは、製品の発売前に記述しています)のですが、とりあえず物理的性質について推測可能な部分だけを書き出してみることにします。
・USB接続。
・文字配列は日本語106/109キーボードそのもの(標準状態ではローマ字/JISかなが使える)。TRON配列への変更はソフトウェアで行うか、あるいはソフトウェア経由でキーボード内のデータを書き換えるかのどちらか。
・機能キー配列は独自のもの。
・右手側の段ズレは省スペースキーボードにありがちな均等ズレ(通常のキーボードとは若干異なる)
・左手側の段ズレは右側の鏡面配置。よってズレの方向自体が逆。
・両手とも、人差し指側がせり上がる構造。これはTRONキーボードのみではなく、同種のキーボードが一様に採用している。人差し指の担当する部分が高くなることにより、中指よりも短い人差し指を十分に活用することが出来る……と、そういう面があります。
・左右は分離されているため、自由に間隔と正対角度を変更できる。
 ……と、こんな感じのキーボードです。

 機能キー配列が微妙なものの、どちらにせよUSBキーボードなので「配列変更アプリケーション」……たとえば姫踊子草などを使えば、容易に色々な入力法を再現できそうです。

────────────────────
 「(μ)TRONキーボード」の上に載る配列は、本来次のとおりです。
・欧文用配列──Dvorak配列
・和文用配列──TRONかな配列
 もっとも、このキーボードが「JIS配列(Qwerty配列+JISかな配列)」と「TRON配列(Dvorak配列+TRONかな配列)」の間でだけ切り替えが出来るのか、あるいはもっと柔軟な設定が出来るのか……という部分については不明なままです。
 たとえば、欧文用配列と和文用配列を自由に設定できるのであれば……
・欧文用配列──Colemak配列
・和文用配列──飛鳥カナ配列(*)。
 とか、そういう構成も(キーボードに覚えこませた状態で、特別なソフトウェアを必要とせずに)使えるのかなぁ……などと考えてみたり。
 (*:TRON配列の論文を見る限り「同時打鍵シフト」ではなく「普通のシフト」を採用しているはずなので、たぶんこのキーボードは同時打鍵処理をサポートしていないのだと思います。ゆえに飛鳥カナ配列を使う場合も同時打鍵は使えず、連続シフトの部分だけが有効になりそうです。)

 どちらにせよ、出荷時には「JIS配列(Qwerty配列+JISかな配列)」の設定になるでしょうし、キープリントにもそう刻印されているようですので、「エルゴキーボードには興味があるけど、使い慣れない入力法はちょっと……」という方にとっても問題はなさそうです。
 #この点は「商売の仕方がわかってるよなぁ……」と妙に納得。というか、論文を見ても「はじめに物理配列ありき、後から論理配列を決定」調なので、売り方の順序としてもこの方が正しいように思います。

────────────────────
 さて、物理配列部分ではなくて論理配列についてですが、こちらはどうやって実装するのかがよく解らないので、とりあえず「TRONかな配列」について書くことにします。
 一応、論文として「BTRONにおける入力方式 -TRONキーボードの設計-」がありますので、その要約をしてみようかと。詳しく知りたい方は論文をご覧ください。
http://fw8.bookpark.ne.jp/cm/ipsj/...
 また、TRONキーボードの論理配置画像が掲示されていますので、こちらも併せてご覧頂くことをお勧めします。
http://www.sakamura-lab.org/TRON/...

 TRONかな配列は、Qwerty配列と句読点位置互換(読点がカンマに、句点がピリオドに対応している)な「ひらがな入力」の一種です。
 手首を固定したままの状態で指の運動機能に関する測定を行い、その結果を元に(キーの位置と)文字配列が決定されました。そのため、今ローマ字入力の方がやっている(かもしれない)ように「手首をパームレストにつけたままで入力する」という利用シーンをあまり崩すことなく使える可能性があります。

 手首を固定したままでも打てるように設計するため、最上段(数字が書かれた段)にはひらがなを割り当てないようにしました(これは80年代以降に設計された入力法にほぼ共通する特徴)。
 次に、かな入力では「30程度のキーでは全ての文字を打ち分けることが出来ない」ので、シフトキーを設置します……が、英字入力におけるシフトとは違って高頻度に操作する必要があるため、なるべく押しやすいキーを……ということで「親指位置にあるキーを使ってシフトする」方針が採られました(これは親指シフトと新JISかなが規格に規定し、親指シフトでは実機に採用されている。またローマ字入力でもM式が採用している)。
 さらに、数値上のシフト回数(特に片手で2個のキーを押す操作)をなるべく減らすために、「高い頻度で使う文字をシフトなしで打てるように」設計しました(これは新JISかなが採用)。
 そして、(今のように長文節変換が主流ではなかったので)変換キーと無変換キーを多用しても支障が出ないように、変換キーに絡みやすい文字について特に配慮した文字配列になっています(これはTRONかな配列独自の思想)。

 簡単に言うと、TRONの論理配列(ひらがな配列)は【「新JISかな配列」の概念で、「親指シフト配列」を再設計しなおした】と言ってもそう間違いはない……と、そういう作りになっています。
 この適当な物言いが「それほど外れてはいない」理由については、論文を噛み砕いて理解いただければ合点がいくものと思われます。

 TRONキーボードは人差し指側がせり上がる形状になっているので、人差し指をよく使ったとしても腱鞘炎になりにくい構造になっている……のかもしれません。
 そのためか、人差し指を中心として文字入力を行うように文字が並べられています。

──────────
【単独で文字キーを押す】
_ら_る_こ_は_ょ__き_の_く_あ_れ
_た_と_か_て_も___を_い_う_し_ん_ー
ま_り_に_さ_な____す_つ_、_。_っ
──────────
【文字キーを押す前に、同じ手の側にあるシフトキーを押し始めてから文字キーを押す】
_ひ_そ_・_ゃ_ほ__え_け_め_む_ろ
_ぬ_ね_ゅ_よ_ふ___お_ち_ー_み_や
ぇ_ぉ_せ_ゆ_へ____わ_ぃ_ぁ_゜_ぅ
──────────
【文字キーを押す前に、反対の手の側にあるシフトキーを押し始めてから文字キーを押す】
_び_ぞ_ご_ば_ぼ__ぎ_げ_ぐ___ゐ
_だ_ど_が_で_ぶ___゛_ぢ_ヴ_じ_ゑ
ヵ_ヶ_ぜ_ざ_べ____ず_づ_,_._ゎ
──────────


 半濁音である「ぱぴぷぺぽ」は利用頻度が低いため、これは「清音キーを押してから、半濁点キーを押す」構成になっています。
 とはいえ、もともと逆の手にある親指シフトキーを押しながら押して出す部分には元から1キーの空きがあり、かつ「ゐゑゎヵヶ」の直接入力を取りやめるなどすれば都合6個の定義が空きます。
 お好みに応じて、これらの箇所に「ぱぴぷぺぽ」を割り当てれば、用途によってはさらに快適な文字入力が可能と思われます。

 一番の謎は、「TRONかな配列はQwerty互換の句読点位置で最適化したのに、なぜ英字配列としてDvorak配列(Qwertyとは句読点位置互換ではない)を採用したのか?」というあたりでしょうか。
 個人的には(欧文言語を打つ場合に限れば)Qwertyってそれほど悪いようには思えない(Dvorakもいいとは思うけど、その差を語れるほど詳しくない)ので、なんとなく不思議なんですよね……。

────────────────────
 あとは余談を。

 TRONの坂村教授が「それは設計できない&覚えられないだろ!」と記録に残していることがあります……それは「濁音分置」という考え方です。
 坂村教授の論文では、この検討についての記録があります。6ページ目左側の中ほどに「第一の方法」として、(半)濁「点」ではなく(半)濁「音」を別置きする方法を除外した理由について記してあります。
http://fw8.bookpark.ne.jp/cm/ipsj/...
 親指シフトの神田さんは、この点についての記録を残してはいないのかもしれません……とはいえ、親指シフトという「アイデア」(論理配列どころか物理配列よりも前の段階)に行き着いたのが1978年の1月5日、基本的な入力方法を決定したのは同年前期、OASYSの試作機を製作開始したのは同年8月、翌年1月8日には試作機自体を(入力法のうち物理配列・論理配列を両方確定させて)稼動させていたらしいことからすると、スケジュール的には「濁音同置」でしか設計しようがない状態だったのかもしれません。
 より詳しい資料が見つかり次第追記しますが、果たして見つかるかどうか……。
http://www.ykanda.jp/ntw/ntw.htm
http://www.ykanda.jp/ntw/memo04.jpg
http://www.ykanda.jp/txt/txt/25a.txt
http://www.ykanda.jp/ntw/plan03.jpg
http://www.ykanda.jp/txt/...
http://www.ykanda.jp/ntw/first.jpg
http://www.ykanda.jp/oyayubi.htm


 濁点キーが別に配置されているJIS系の入力法ならば、「清音キー」と「清音キー→濁点キー」の関係を断ち切ることは出来ません。
 いっぽうで、本来「濁点キー」を必要としない入力方法であれば、原理上は「清音キーと濁音キーを別のキーに割り当てる」ことも可能です。
 ……で、それを「実際にやってしまった」のが、「飛鳥カナ配列」だったりします。

 ちなみに、文字入力や活字の分野というのは「一生をささげた人が何人もいる!」という世界です。
http://www.ykanda.jp/jef/arch/...
 世界中で、様々な分野の技術開発に「一生をささげる」例が溢れているわけです。
 そうすると、文字入力の分野もまた、同じほどに時間と労力を必要とするもの……なのかもしれません。

μTRONキーボード&TRONかな配列

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相沢かえで
  • 2007/01/02登録
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