「屍鬼二十五話-インド伝奇集」
我が愛しの東洋文庫の中の一冊。11世紀のインドの詩人ソーマデーヴァの作品で、シヴァ神が妃に語る物語という大枠のなかの一つの物語であり、またこの物語自体が、作中の屍鬼が王に聞かせる物語という形式を取っている為、何重もの入れ子構造になっている。
昔々、古代インドの王さまが、謎の僧侶に頼まれて、樹にぶら下がる死体をとりに行く。王さまは死体を背中に背負って歩いていくのだが、その間死体にとりついた屍鬼は王さまにひとつ物語を聞かせる。屍鬼はかならず一つの物語の最後に王さまに質問し、王は必ず屍鬼の問いかけに答えなければならない。王さまが屍鬼の問いに答えると、屍鬼は王さまの背中から離れ、もとの樹に戻ってしまう。
屍鬼を樹からはずして運ぶ→物語を聞いて質問に答える→また元の樹に戻る、という繰り返しが25話続くわけです。王さま、よく途中でキレないよなあ。
クイズの一つ一つは、王者としての資質や聡明さを問うもので、ついつい王さまと一緒に問題に答えてからページをめくってしまいます。答えが間違っていたら、自分的にはゲームオーヴァー。屍鬼に殺されて終り。だから一生懸命ページをめくらずドキドキしながら考えます。まあ、いろいろと納得のいかない答えもたまにはあります。
物語の入れ子構造という点では「アラビアン・ナイト」に似ているが、最後がクイズ形式になっているのが面白い。しかも屍鬼の出す問題は単純に道徳的な問題ではないので結構難しいです。奇想に満ちた設定といい、屍鬼の物語の面白さといい、情景描写のおどろおどろしさといい、にもかかわらずなんとも間抜けな感じといい、幻想文学好きには堪えられない物語だと思う。こういう古典の奇譚集のたぐいでは、私のなかで確実に五本の指には入る傑作。
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