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「リトル・ミス・サンシャイン」(ジョナサン・デイトン監督)

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 あまりにも皆が個性的でしかも破綻スレスレの状態のひとつの家族の物語。
 その家族の最年少の女の子、おそらく小学校低学年程度のその女子が「子供のミスコン」の予選に通過し本戦進出が決定したことからこの物語ははじまる。たしかに可愛い女の子ではあるけれどしかし「子供のミスコン」のかわいさとはちょっと隔たった可愛さに過ぎないその女の子が「本気で」ミスコンに出たいと夢見ているところがすでにコミカルで可愛げがあってなかなか楽しい。そんなファニーでキュートな女の子に引っ張られるようにして家族の物語が展開していく。おんぼろ車に乗って破綻スレスレの家族一同がミスコン会場へ向うというヘンな家族によるロードムービー。

 家族ものの物語ではあるのだけれどしかしそのあまりにも個性的なそれぞれの人物への演出的距離感はむしろ群像ものの距離感に似ていてつまりまったく無関係な者たちがそれぞれのエピソードを背負いながら関わり合い触れ合っていくという群像ものの語り口によって家族ものを撮りしかもそれをロードムービーという形に収めているのだからしかもその形式的試みがことごとく成功しているのだからこの映画がつまらないはずがない。シナリオは緻密であり演出は的を得ていて演技者たちも皆健闘しているしその上とこどころに散りばめられたギャグは見事にズバズバ嵌まっていく。まったく飽きさせない秀作。

 基本的にアメリカの「勝ち負け」を過剰に重視しすぎた空疎なライフスタイルに対して懐疑的な眼差しをこの監督は向けていてだからそのアメリカ的空疎さの代表として位置づけられているこの家族の父は(「成功のための秘訣」というようなビジネス書で成功しようと本気で野望を抱いているこのこの家族の父は)かなり滑稽な存在として映画の中でやりこめられ、しかしまたその父的なものに(空疎なアメリカ的なものに)反発しすぎているその息子も(ニーチェを愛読している半引きこもりの息子も)美化されすぎることなくあくまでも奇妙なものとしてクールに位置づけられてもいる。むろん「子供のミスコン」など空疎なアメリカ的なものの象徴でしかないだろう、そしてそのミスコンのための「出し物」のダンスをひそかに教えている祖父は兵隊上がりのジャンキー祖父さんであり(マリファナが理由で老人ホームを追い出されたいかれた祖父さん)だから彼とて(名誉ある元軍人とはいえ)アメリカの空疎なゴージャスさから見れば完全な脱落ものにすぎなくもあるのだ、そしてたまたまこの家族のもとに転がり込んだ妻の兄(子供たちにとっての伯父さん)はかなり優秀なプルースト学者のようなのだがしかし同性愛者でありしかも思いを寄せていた男性に振られてしまい(「彼」をライバルの学者に奪われてしまい)そしてそれがきっかけとなって大学を辞めドロップアウトしとうとう自殺未遂すら企ててしまったこれまた困ったインテリさんなのだ。

 あまりにも個性的にすぎる家族の皆がなにかひとつの「正しい」目的を共有することでとうとう「分かり合いました」などという綺麗な結末へと向けて話が「上品」に進むはずもなく、なぜならここでの皆の共通の目的は「子供のミスコン」へと孫を出場させようというまったく間違った無意義な目的でしかないのだから。したがってそのプロセスで「分かり合う」ためのふれあいが起こるわけもくそしてむしろその無意味な目的へのプロセスの只中では個性と個性のぶつかり合いが無遠慮に生じるばかりなのだ。しかしその個性と個性の無遠慮なぶつかり合いがなぜか明るく楽しくユーモラスでありえるのは家族の皆が等しく「インチキ」かまして「分かり合った」振りをすることは避けようとはしているからなのである(というか、もっと厳密に言うならば、インチキして「分かり合う」振りをしようなどという家族的道徳観は彼らの頭の片隅にもなく)だからむしろインチキせずしてぶつかり合うことをこそむしろ彼らの共通の倫理としているほどなのである(そう、その倫理においてだけは皆共通しているのだ)。つまり皆はお互いの個性をまったく好んではいないのだがしかしお互いに個性があることは百パーセント認め合ってはいるといういかにもアメリカ映画的な倫理観はこの映画には一貫して保たれているのだ、だからその限りでこの映画はアメリカの王道コメディー特有の抜けの良い絶望感を湛えているといえるだろう。そしてその点において笑わせ泣かせようとしているのだ。それが清々しいのだ。

今年の単館ロードショー作品を代表する一本となることでしょう。
 

 と思ったら、アカデミーショー作品賞にノミネートされているようだ。
 ヘェー。

 予告編からしてすでに楽しい。 

「リトル・ミス・サンシャイン」(ジョナサン・デイトン監督)

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room9
  • 2007/02/03更新
  • 2007/02/01登録
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