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「ディパーテッド」(マーティン・スコセッシ監督)

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 上手に誤魔化しながらも誤魔化しきれてはいないという他ないそんな「小さな」粗もないことはないがしかしそんなことなどどうでも良いとつい大目に見たくなってしまうほどになかなか楽しい一本に仕上がっている。よく出来ています。

 「巨匠」スコセッシ監督の「華麗な」カメラワークなどはまったくこの映画には無くひたすらクールでプロフェッショナルなカットわりとつなぎとリズムが一貫していてその己惚れの無さがじつに上手くいっている。そもそスコセッシさんは天才ではなくむしろそれこそかつてのスタジオシステムのような枠組みがきっちりあった中で職人という役割に徹した上でささやかな個性を発揮出来るというタイプのひとでありそういう意味でいえばデ・パルマなどよりもはるかに優秀ではあるのだけどしかしなにをとち狂ったのかスコセッシさんは自分のことを自分の名で押し切れる作家であるかのように勘違いしてしまいその結果いくつか惨めな駄作をつくってしまいもしたのだけど(しかしその点デ・パルマには「作家」などという勘違いがまったくないぶんすさまじく「酷い」ことにはならずにすんではいるがしかしあれを無条件に優れていると言えるはずもなく)ところが最新作「ディパーテッド」でのスコセッシさんは「作家」という己惚れをかなぐり捨ててここでは一流の役者たちを的確に演出する職人に徹しているので(しかも香港映画の娯楽作のリメイクを演出する職人に徹しているので)だからその点ではスコセッシさんにうってつけでありとても上手くいってもいるのだ。そしてこのような条件さえ整ったならばスコセッシさんらしい「作家性」もその職人技の中にチラチラ見えてきたりもするのだからちょっとやっかいでもあるのだ。めんどくさい人だなあ。

 ジャック・ニコルソン、レオナルド・デカプリオ、マット・デイモン、そしてマーク・ウォールバーグ、じつに豪華な出演陣なのだがしかしもっともここで卓越しているのはマークウォールバーグの演技だろう。ジャック・ニコルソン演じる悪役のボスはなかなか迫力あるダメ男となってはいるがしかしどこか大物感が欠けていて(エピソードかひとつふたつ足らないような気がする、ダメ男ではあってもやはり悪者たるもの大物感があってほしいのだ)その点多少物足りなかったしあるいは「ニセ」警官役のマット・デイモンも悪くはなかったけどやや演技のリズムを間違えていたように見受けられた。美男子役ではディカプリオはあまり面白くはないがここではかれは「ニセ」ならず者を演じていて不精髭など蓄えたりもしていて予想以上に見せてくれてはいるのだけど(健闘している)しかしやはりそれ以上に満点を通り越して卓越していたのは悪態警官を演じていたマーク・ウォールバーグであろう。麻薬や殺人や国家機密などにつねに関わっているようなならず者集団と命懸けで関わるほかない最もダーティーな州警察最前線では「紳士な野郎」など信用ならない木偶の坊であり「ユーモラスな良い奴」などまったくの愚か者でしかなくあるいは「エリートFBI」など仕事の邪魔でしかなくてだからそんな「超ダーティー」な最前線では悪態つくことしかしないような最悪人格こそがもっとも正しい人格なのである、と、そのようなスコセッシさんのなかなか鋭い演出的リアリズムをマーク・ウォールバーグがきっちりその期待に応えつつ満点以上の出来栄えで体現している。なかなかかっこいい。悪態つくことしかしない最悪野郎がしかし最悪のままで最高であるというじつに難しい役どころを(ということは役者的にはもっとも美味しい役どころを)マークウォールバーグが申し分無く演じきっている。映画の中で映画を組み立てるための設計的演技ができるのだからしかもさまざまな人物造形がこなせるのだからマーク・ウォールバーグというのはやはりかなり優秀なのだ(ジョニー・デップに匹敵すると言ったら褒め過ぎだろうか?)。スコセッシとマーク・ウォールバーグと香港映画の不思議な出会いがここでは思わぬ幸福を生んでいる。こんな偶然でも起きないと傑作を撮れないのだから(しかしこのような偶然が起きれば傑作をとってしまうのだから)スコッセッシさんはつくづくやっかいな人だとおもう。めんどうくさいひとだなあ。

「ディパーテッド」(マーティン・スコセッシ監督)

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room9
  • 2007/02/19更新
  • 2007/02/05登録
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