「くさいはうまい」
「くさい=うまい」とは意表を突いたタイトルに思えるが、著者・小泉武夫氏は、心底そうだと思って論考を展開する。数ある小泉本の中でも、中身は至ってまじめ。「発酵食品の滋養性を認識し、微細生物の底力と神秘性を理解し、自らの食生活に対して、わずかながらでも教養を高めるための一助になれば」(あとがき)という、著者の真剣な思いが伝わってくる。
最近小泉氏は「発酵が地球を救う」などと宣い、エネルギーや環境、食糧問題の解決における発酵の可能性を説いているが、その一つとして発酵食品の神秘的な保健的機能性(小泉氏は「滋養たっぷり」と表現している)について論じた草分け的な存在が本書だという。
新聞社の健康医療月刊誌に連載したものを改訂、収録したせいか、さむ~いダジャレなんかは登場しない淡々とした語り口だが、科学的分析に加え、歴史と文化、さらには食い方を交えた文章は奥が深い。
甘酒、クサヤ、なれずし、魚醤、チーズにヨーグルトとさまざまな発酵食を紹介。とちなみに、納豆は一般的な「糸引き納豆」と、島納豆、寺納豆とも呼ばれてネバネバしない「塩辛納豆」の二つを挙げるほか、大豆を使う点ではインドネシアの「テンペ」も似たような発酵食なのかもしれない。
表紙も実ににおいそうな、わらずとで糸を引く納豆である。
本は三部構成で、第二部は発酵食以外のクサイ食べ物を含めたエッセー。世界のなれずし、魚醤はまさに得意分野。面白いのは野生動物についてで、イルカ料理を食べた話なんかも出てくる。しかも、なんでも日本書紀にも、応神天皇が即位前に越前に行ってイルカをとった縁から気比神宮(福井県敦賀市)に御食津神をまつったんだとか(かなり余談)。
第三部は哲学者・中村雄二郎氏との対談「におい文化の復権」。これがなかなかいい。臭いは個性であり、食の魅力であると痛感させられるし、逆に抗菌グッズ、さまざまな消臭グッズなんかがはやる現代は、人間の抵抗力が落ちているのかも。
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小泉武夫『くさいはうまい』 読み終えたらキムチを買いに走る本
- 武闘派経理マンの今日の注目 | Tracked: 08.7.31 12:19 am
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