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M式・五十音ソフト(50音順ローマ字入力)

 富士通が日本語電子タイプライタ「OASYS」を発表してから4年後にあたる1983年、NECは「M式」と呼ばれる入力法を持つキーボードを製品化しました。
 http://121ware.com/apinfo1/content/...
 2007年、この入力方式を「キーボードとソフトウェアの組み合わせ」で再現する製品が販売され始めました。
 http://store.yahoo.co.jp/d-tech/...


 M式は、基本的には「ローマ字入力」を行うけん盤配列です。
 ローマ字綴りを用いた日本語入力のうち、「音読み漢字の読みがな」を効率よく入力するために、特徴的な工夫がなされています。


 ……で、説明をする前に。
 ローマ字入力では、基本的には「子音→母音」(たとえばK→Aなど)の順序で入力することで、「ひらがな」が決定されます。
 ところが、最もキーを多く叩くシーケンスでは「子音→子音→子音→母音→母音」(たとえばS→S→Y→U→Uなど)の順で打鍵することで、はじめて「ひらがな」が決定される場合もあります(最後にUをつけているのは、M式がそれを省略する方法をサポートしているためです……詳しくは後述)。
 まず、この前提を理解しないと話が始まりませんので、「ひらがなを出すためにどういう操作をするのか」というところについて、想像しつつご覧ください。



 M式の基本的な仕掛けは「けん盤の右手側に子音を寄せて、左手側に母音を寄せた」ことにあります。
 これにより、ローマ字入力でセットになりがちな「子音→母音」のつづりを、常に「右手→左手」の順序で入力することができます。


 次に、「音読み漢字の読みがな」で特徴的に使われがちな「母音と子音の間に来るY」については、左手側にある「無変換」キーを親指で押して入力します。
 「無変換」キーを押すタイミングは「小指で押すShiftキー」と同じですので、たとえば子音「KY」を打つ場合には、「無変換キーを押しながらKキーを押す」という手順を取ることになります。
 また、子音を重ねて入力する決まりになっている「っ」は、「無変換キー+Y」で入力することができます。


 次に、「音読み漢字の読みがな」で特徴的に使われがちな「母音に続く【ん】」「母音に続く【つ】」「母音に続く【く】」については、右手側にある「変換」キーを親指で押して入力します。
 「変換」キーを押すタイミングは「小指で押すShiftキー」と同じですので、たとえば母音「Ann」を打つ場合には、「変換キーを押しながらAキーを押す」という手順を取ることになります。


 さらに、「母音の2つ続き」のうちよく使わやすい「ai/ui/uu/ei/ou」の5パターンについては、母音キーの下にあるキーを単独で操作することで出るようになっています。


 このようにM式は、日本語入力のうち「音読み漢字の読みがな」を効率よく入力する仕掛けを持っています。
 それと同時に、母音と子音のキーをそれぞれ50音順に配置することにより、「50音表とキーボードの対応関係さえわかれば、容易にタッチタイプできる」仕掛けを取ることにより、ローマ字入力に関してそれほど知識がなくても使い始めることができるという特徴を備えています。
 また、入力するときの手の動きは常に「右→左」の順で要求されることとなるため、入力時に指絡みしづらい(*)という特徴を持っています。
 (*:片手側のみの操作が続くと、特に「器用には動かないほうの手」を中心に、入力速度が遅くなってしまうという問題が発生します。この問題に対し、「M式」「親指シフト」「TRON配列」「JIS X 6004」などは【交互打鍵率を上げる】方針を採用し、「飛鳥カナ配列」などは【人力評価を繰り返して一文字ずつ位置調整を行う】という方針を採用しています。)


 この入力方式は、主に多量の「音読み漢字の読みがな」を入力する必要があった「データ入力会社」などで重用されました。
 ひらがな入力系の「親指シフト」「TRON配列」「JIS X 6004」「飛鳥カナ配列」などは「漢字かな交じり文全体を効率よく入力すること」を前提に設計されたため、データ入力会社で特に要求される場面が多い「住所・氏名などの漢字入力比率が高いシーン」にとっては最適とはいえず、こういった用途においてはM式のような「音読み漢字の読みがな」が入力しやすい方式は特に有効な入力手段だったのです。


 現在、M式を一般的なキーボード上で再現するために使う「五十音ソフト」は、オンデマンド印刷業者である「Qプレス」が発売元となっています。
 同社ではM式キーボードを入力業務に利用しているそうなのですが、NECがM式の取り扱いをやめたことをきっかけに、この「五十音ソフト」の計画が持ち上がったようです。
 自社の業務上必要とあれば、当然作るしかありません……そのためにM式の設計者から許可を受けて、M式をソフトウェアベースで再現する方法を採られたそうです。


 富士通が「親指シフト」関連の権利を日本語入力コンソーシアムへと移して広く公開し、結果として「商用ソフトと有志製作ソフトの2本立て」で入力法を維持してきたこととは対照的とも言える状況ではありますが、一方では「両者共にソフトウェアベースで入力法を実現する道を選んだ」という共通点もあり、今後の動向には注目したいですね。


 ちなみにこの入力法、「親指シフト」「TRON配列」「飛鳥カナ配列」と同じく「親指位置にある無変換・変換」の2キーをシフトとして使うという共通点があります。
 そのためか、「五十音ソフトMark3」では、M式のみではなく親指シフトでの入力も行えるようになったそうです。
 http://store.yahoo.co.jp/d-tech/...


 だいぶ昔は、なぜか入力法の利用者が「○○入力法は○○だからよいのだ。××入力法は××だからダメなのだ」などと言い合う論議が色々とあったようです。
 そういう論議があった背景には、当時は「ソフトウェアを使って、自分好みの入力方法を手元のパソコンで実現する」ということが容易にはできず、自分が使っている入力方法を「未来にわたって使い続ける」ためにはJIS規格へとねじ込むしかなかった……という、悲しい歴史的な事情がありました。
 つまり、技術的&コスト的な問題で「入力法だけをとって付ける」ことができなかったのです。


 ……もっとも、今となってはそういう時代が過ぎ去りました。
 新しい日本語入力法を製作している人は今でも論議をするはず(→これは設計のための意見交換を兼ねている)ですが、日本語入力法を「利用する人」は、もうわざわざ「○○入力法は○○だからよいのだ。××入力法は××だからダメなのだ」……などと言い合う必要はないのです。
 【自分が使いたいと思う入力法に対応するソフトを持ってきて、自分が使いたいと思うパソコンにインストールして設定すれば、自分が使いたいと思う入力法を実現できる】……それが、21世紀の標準的な姿なのです。


 「サァ、結論の出ない議論は終わりだ。これからは【色々な入力法を、自由に使える環境】を目指そう」……と、そういう姿勢を示すソフトウェアは既にいくつか存在するのですが、この方向性に「五十音ソフトMark3」が応えたからこそ、【今までの常識では考えられなかった】「M式」「親指シフト」「50音順かな配列」の3種を扱えるソフトウェアを開発されたのだと、私はそう感じています。
 この方針、私が知る限りで一番古いものとして「姫踊子草」があります。
http://hp.vector.co.jp/authors/...
 姫踊子草の製作者である鈴見咲さんは、以下のような文章を2002年に公開されました。
http://suzumizaki.at.infoseek.co.jp/...
 ちなみに、私も「何かいい方法はないかなぁ……」と考えていまして、メモ的にこんなものを書いていたりします。
http://d.hatena.ne.jp/maple_magician/...


 「親指を上手に活用すると、日本語入力はもっと楽になる!」というコンセプトは、もともとワープロ時代からも「無変換(ひらがな・カタカナ変換)」「変換」という2つのキーによって連綿と受け継がれてきました。
 残念ながら、日本国内で一時代を築いた「PC-9801/PC-9821」では、これらのキーに相当するキーが押しやすい位置にはなく、結果として「親指を上手に活用する」という文化は、一旦消滅してしまいましたけれども……。
 今のキーボードでは、「PC-9801/PC-9821」時代とは異なり、親指で押しやすい位置に「無変換」「変換」のキーが戻ってきました……とすると、これらのキーを徹底活用するほうが、やはり「楽して日本語入力できる」はずです。


 そして、ここからさらに一歩進んで、これらのキーを「変換操作よりも利用頻度が高い、親指シフトキーとして使う」方法をとれば、より楽に日本語入力を行える可能性があります。
 ローマ字入力方式であれば「M式」がありますし、ひらがな入力法では「親指シフト」「TRON配列」をはじめとしていくつかの入力法が提案されています。


 ……ちなみに、親指シフトキーを上手に活用すると、おおむねこういう入力様子になります。
 http://www.youtube.com/watch?...
 手を動かす量や回数は入力方式により異なるものの、おおむね「指を動かす範囲をコンパクトに・指を動かす量を少なく」することができます。
 もし興味がありましたら、日本語入力法について色々調べてみることをお勧めします。


 あなたが「自分にとって、より快適で・より楽に・より素早く・より正確に」日本語入力を行える方法とめぐり合えるよう願っています。

M式・五十音ソフト(50音順ローマ字入力)

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投稿者:
相沢かえで
  • 2007/03/11更新
  • 2007/03/02登録
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