手動式珈琲豆挽器
ところで
手で廻すことによって味わいが深くなるのは、別段鉛筆削りに限ったことではない。
珈琲豆も電動ミルを使用して安直に微粉末をこさえた場合と、たかだか30g前後の豆に悪戦苦闘して念入りに挽いた場合とでは、その旨味に於いて大いなる差が生じることは周知の通りである。
以前は「Zassenhaus」製のものを愛用していたのだが、流石に二十年も使っているうちに歯がうまく噛み合わなくなり、どうせなら同じタイプのものに買い換えようとしたところ、最近ドイツの御本家が倒産してしまったようなので、仕方がないから「PEAUGEOT」製のものにしようと思い立った。
クルマは無理だが、珈琲豆挽器ならボクでも買える。
それはそれとして
単に豆を挽くだけなら重い鋳物製の縦回転タイプの方がはるかに楽である。だが、それでは折角の横回転型独自のえも云えぬ不安定さや、冬場の雪掻きにも似た不必要とも思える労力の無駄遣いを味わうことができず、よってもって艱難辛苦の末に味わうべき達成感と、その後にようやく訪れる芳醇な薫りを愉しむこともできない。
何事も苦労なき安直さの向こう側に果実は実らず、阿鼻叫喚・紆余曲折・大波小波・焦頭爛額の果ての一滴にこそ真の味わいは宿るのだから、ほんのちょっと前の壁掛式有線電話やフォードⅠ型やローラー型洗濯物脱水装置がそうであったように、人間はすべからくハンドルを必死に廻しながら天を仰ぎ観て、己の拙き運命を呪いつつこれでもかこれでもかと、一心不乱にグルグルするところから事を起こさなければならないのである。
畢竟
ボクが携帯電話が嫌いなのは、手廻しのハンドルが付いていないからかも知れない。
- 2007/03/10更新
- 2007/03/10登録
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最新コメント5件
2007/03/10
無印ヨメ 音がいいですよねー!手回しのハンドル付きの携帯、思いつかなかったけど、おもしろいかも?!
紙飛行機 苦労なき安直さを愛する縦回転派。この手のミルは挽いている豆が少なくなってくるとぴょんぴょん辺りに跳ね出すところが味わい深い。
pam このタイプので自分用に10グラムを挽いています。毎回豆がプチプチ飛ぶので、次回は蓋付きにしようと思って10数年、壊れる気配もありません。丈夫ですね、このタイプ。
涙腺子 高速スライダーが「ジャイロボール」へと突然変異したように、観る角度(人)によって回転軸は変ってくる。これは坐禅の極意でもあるのですが、要は社会(俗世間)の遠心力に振り回されるのか、或いは己への求心力を高めて周りを適度に振り回すのか。その双方向の力の拮抗の中にこそ真の静が生じて、これを「動中在静」と呼んだりするのですが、人生すべては修行ですから、頑なに定点に安住を求めては却って心に摩擦が生まれて窮屈になると云う理屈です。珈琲豆挽作業に於ける真実も同様で、ぎくしゃくした苛立ちの横回転に慣れてしまうと、これが一種麻薬的な愉悦へと転じて病みつきになるんですね(笑)。
Himajin 「何事も苦労なき安直さの向こう側に果実は実らず」この言葉は堪えますね。「早いがご馳走」この言葉からの脱出は困難。です。炒るのは手焙煎ですが挽くのは電動ですね。でも一度挽き比べて味わってみたいです。
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