SING A SONG / 豊田道倫
10数年のキャリアの中で、豊田道倫の最高傑作といえばこのアルバムを挙げたい。
全曲アコースティックギター一本で一発録音。ZAK以降の名ダブエンジニアとして知る人ぞ知る内田直之と二人で数日で録音、シャネルのサングラスの隙間から鈍く光る眼光を捕らえたジャケット写真は当時、豊田のライブで受付をしていたという梅佳代によるもの。
ヒップホップのようなポジティブさを鼓舞するリズムもなければ、ロックのような止め処も無い衝動も無い。ポップのような一気に沸点まで持っていくきらめきもない。
しかしながら、ヒップホップよりもリアルで生々しく、ロックよりも強く感情を揺さぶり、ポップよりも私的な部分に訴える感傷と人間味のあるユーモアに満ちている。
「乳首を強く噛みすぎた 薄く血が滲んだ/君には言えなくて 血をなめた」
という歌いだしで始まる「雨のラブホテル」で、カジュアルに人に勧めることを拒んでいるかのようにも感じなくもないが、今を時に一人で、時に誰かと、ただひたすら生きている人達の生活に入り込んでくる賛歌としてのサウンドトラックのような、完成されたアルバムだと思う。
- 2007/03/27更新
- 2007/03/27登録
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