浅科五郎兵衛・関所破りの櫻
信州佐久平の旧浅科町には全国の寿司屋から引く手あまたの「浅科新田・五郎兵衛米」なるブランド米がございまして、殆ど流通経路に乗らないもんですから、地元以外に滅多に庶民の口には入りません。名前の由来である市川五郎兵衛は上州南牧村出身で、江戸初期に小諸藩の許可を得て浅科の地に用水路を開削。「五郎兵衛新田村」なる開拓村を興したんだそうで、蓼科山系の湧水を引き込んだ「五郎兵衛用水」は全長20kmに及ぶと申します。
それから数十年。五郎兵衛亡き後、彼の功績を称えようとした新田村の若者が生まれ故郷の上州から櫻の苗木を持ち帰ろうと碓氷峠の関所まで来たところ、生憎のことに通行手形を何処かに置き忘れて来たことに気づいた。普通なら即座に御用となるところですが、役人も他ならぬ市川五郎兵衛の顕彰になるならと、快く関所を通してくれたんだそうで。
以来新田村の民百姓はこの櫻を『関所破りの櫻』と称し、手厚く世話したと申します。
今日も浅科新田を見下ろす丘の上に、見事な枝振りを誇る枝垂櫻。
振りむけば いな穂もさくら 山のゆき
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