アカイロウソクトニンギョ
赤い蝋燭と人魚
酒井駒子さんの制作活動で決定的な転機となったと思われる作品です。
文章を大正10年以来読み継がれている小川未明の名作童話にすることで、酒井さんは初めて絵と構成のみに専念し、前作『よるくまクリスマス前』の画風からは想像できない絵画的表現による圧倒的な幻想性と美しさを獲得した大人向けの絵本。
黒い下地に濡れるように浮かび上がる人魚、海底に沈む魚や貝のきらめき、空に浮かぶ幻想的な月、不気味な静けさに満ちた海、荒れ狂う嵐に翻弄される船、そして暗闇に輝く赤い蝋燭。酒井さんの黒い下地と幻想性を遺憾なく発揮した画風と、小川未明の人間への悲しみを含んだ情緒ある文章との相性は抜群で、女性のみならず男性からの支持も厚い代表作の一つと言えます。
この作品以降、黒い下地は酒井さんの画風の最大の特徴となり、また絵本において絵のみを担当することが増え、同時に単行本の表紙を担当するなどイラストレーターとしての活動も急激に増加しました。子供が読むには辛い作品かもしれませんが、大人向けの絵画的な絵本としてはこれ以上ないほど心に残る素敵な作品だと思います。
- 2007/05/25登録
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