トウニュウシャ
桃乳舎
東京証券取引所前から鎧橋を渡り最初の交差点を左に入る。
すぐ右の路地のすぐ左側にその店はある。
(バイクや車の方、一方通行にはご注意を。)
日本橋小網町にある喫茶・軽食のお店。
創業明治22年らしい。
昔はミルクホールだったらしい。
昭和初期風の建物の上の方に桃の彫刻あり。
中もかなり古い。そしてそれほど広くない。
テーブルも椅子もソファーも珍しいほど古い。そしてコンパクト。
ソファーは座面が狭く背もたれが直角。
ゆりかもめの座席をぶにゃぶにゃにしたらこんな座り心地だろう。
店に入って左側の壁際のソファーはすべて壁に向かって傾いている。
しかし、そんな些事は気にしてはイケナイ。ここはそういう店なのだ。
壁に古いモノクロの写真が貼ってある。
どこかの古い都市だろう。川に橋が架かっている写真だ。
川に接するように建物が建っている。
橋は手前にトラス橋、その向こうにもう1本、そしてかなり遠景に大きな橋が1本。
川は曲がっていて、橋はてんでバラバラな方向を向いている。
遠景の大きな橋はどこかで見たことがあるような形状をしている。美しいローゼ橋だ。
それに気づいたその瞬間に謎が解けた。
手前が鎧橋、その次が茅場橋、奥の大きな橋は永代橋だ。
東証の屋上あたりから撮った写真だ。
もちろん手前の2本は架け変わっているし、
日本橋川の上には今では首都高速が走っている。
そういうわけでわからなかったわけだ。
店内の隅の高い所にテレビが置いてある。フツーの定食屋にありそうな風景。
だけど綺麗な液晶テレビ。
チャンネルはタモリやみのもんたではなく、BS1のメジャーリーグの試合だったりする。
どうやらいつもBS1、野球がなければNHK総合らしい。
片隅には小さい本棚がある。
中身は週刊少年マガジンと週刊少年サンデーと週刊少年ジャンプと週刊少年チャンピオン。バックナンバーが各5冊前後。他の漫画や週刊誌はない。サラリーマンが好みそうなビッグコミック系も当然のように無い。
新聞はスポーツ新聞と一般紙が1部ずつ。真ん中のパーティションの上がホームポジションなのだが、ランチタイムは必ずと言っていいほど誰かが読んでいる。
この店、ランチがこの界隈では群を抜いて安い。
そして結構ちゃんとしていて旨い。
そのせいか、昼休み時はいつも満員になる。
基本的にテーブル1つに4人掛けなので、相席は当然。
混雑している時は順番に勝手に着席しても構わないが、注文するのは店員が来るのを待つのがこの店の暗黙のルール。可愛い女の子はちゃんと来店した順番を覚えていて、前に来た客より先に、勝手に「○○下さい」と言うと、「順番にお伺いしています」とデカイ声が返ってくる。この女の子はそのへんのファミレスのゆるいおねぇちゃんに比べたら3倍は仕事が速くて正確だ。見ていて気持ちが良い。
日替りランチ(480円)のおかずはステンレスの楕円のお皿に乗って来る。
ライスの盛りがかつて経験した事が無いほど少ないけど(笑)、軽食=軽いお食事だから良し。
日替わりのバリエーションは数種類しか無い。2週間くらい通えば全種類制覇出来るはず。
ライス大盛り(+30円)で頼むと結構な量で、おかずが不足気味になるけどカラシの力で乗り切るべし。
カレーライスとハヤシライス(450円)大盛りなんて480円でかなり満足できる。
ほかにもスパゲティー(見事なナポリタン)、ハンバーグなど、数種のメニューがある。
冬場のカキフライは、この店にしては高価な部類のメニューだが、やはり安くて旨い。
もちろんコーヒーもある。250円。当然他の喫茶メニューもある。
だけどランチタイムにゆっくりコーヒーを飲んでいるヤツはたまにしか見ない。
ここはそういう店なのだ。
そうそう、コーヒーを頼むと「砂糖はどうしますか?」と意外な質問が返ってくるだろう。
参った。参りました。何だこの空間は。
レトロとか懐かしいとか、そういう陳腐な言葉で形容するのも恥ずかしい。
くつろげるわけでもないのに安心感がある。
わざわざ変えないで残された物ではなく、それが当たり前だから変わらなかったんだ。
いつまでもずっとこのままであって欲しい。そんなお店。
だけど最近、少し変わったことがあった。
カウンターの向こうにいつも座っていた、とても可愛いおばあちゃんが、
私が夏期休暇を取っている間にいなくなってしまった。
理由は聞きたくない。だから訊いていない。
(2009.9 改訂)
(2010.3 加筆修正)
- 2009/09/16更新
- 2007/06/27登録
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