カノウセイノブンガク
可能性の文学
無頼派の代表作家である織田作之助による文学批評。
志賀直哉は小説の気品を、美術品の如く鑑賞し得る高さにまで引き上げたが、彼の作品のような「心境小説的私小説」こそが最高のものだとし、このような価値観を強要する文壇を批判している。書かれなければならないのは、「人間の可能性」であり、造形美術的完成の境地に逃げ込んではいけないと著者はいう。
この批評には「銀が泣いている」の坂田三吉が登場する。一世一代の勝負で指した「阿呆な将棋」(有名な初手端歩突き)が、定跡への果敢な挑戦として、今でも伝説として記憶されているのは、可能性というものが、いかに人を魅了するかということを示している。
完全な美というものは存在しない。たとえあるとしても、それは時代とともに移り変わるものだ。だから作品の完成度よりも、可能性、多様性が求められるべきなのだ。
僕はこういった、ヴィルヘルム・フォン・フンボルト、ジョン・スチュアート・ミル、アイザィア・バーリン系列に属する思想に妙に傾倒しがちである。
「可能性の文学」として挙げられるのは、バルザックやスタンダールである。ゴダールの『映画史』(たぶん)には、「すぐれた芸術は他人を見ることによって、自分を発見する。エンターテイメントは自分を見ることによって、自分を忘れる」という言葉があった。バルザックやスタンダールの小説が日本の文壇で認められなかったのは、安易に主人公に感情移入して通俗小説的に読まれてしまうのを嫌ったからだとも思える。
講談社文芸文庫『夫婦善哉』所載。
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コメント (1)
2002/09/09
yatsu 道頓堀で解体中の旧中座全焼、ガス爆発?
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?...
織田作之助の「夫婦善哉」に登場する割烹料理店「正弁丹吾亭(しょうべんたんごてい)」が火事に巻き込まれたようです。
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