要明研二さんのぐい呑み (山中漆)
昨日だったか一昨日だったかNHKの「美の壺」という番組で、漆器をとりあげているのを見た。(File57 漆器)
http://www.nhk.or.jp/tsubo/...
その放送の何日か前に、茂木健一郎さんのブログにアップロードされていた、白州信哉さんの「美を求める心」という芸大での講義をiPodで聴いた。
http://kenmogi.cocolog-nifty.com/...
また、少し前のNHK「新日曜美術館」で漆芸作家の角偉三郎について放送していたのも見ている。
http://www.nhk.or.jp/nichibi/weekly/...
そうして、何となく漆と酒器に興味を抱いたこともあり、デパートで漆器のコーナーにふらふらと足を運んだ。
しかしデパートで工芸品を買う、ということには実はあまり気乗りがしておらず、とりあえず見るだけ、と思っていた。どうせならその作品が生まれた現地で買いたい、と考えたからだ。デパートで買うなんて安易でツマラナイじゃないか。
売り場には、石川県の山中温泉で作られている山中漆器を扱っているコーナーがあり、そこで、黒朱溜の同じ形をした3種類の、姿の良いぐい呑みがあるのに目がとまった。溜のをためつすがめつ眺めていると、年配の店員さんがよってきて「そのぐい呑みは、とても良い漆を使っているんですよ」という。漆に、いいものと良くないものがある、というおそらくは常識的なことすら、僕は知らなかった。
Iというその店員さんの話は、すこぶる面白かった。僕が何も知識を持たないずぶの素人だとはすぐに見抜いたのだろう。いろんなことを教えてくれた。まず、そのぐい呑みの作者である要明研二さんについて。漆の塗りの腕はピカイチ。このぐい呑みの塗りのどこが難しいのか。そこをこんなレベルに仕上げているのは腕が良い証拠。要明さんは塗りの技術以外に、優れた漆の精製技術をもっていること。年齢、人柄、使っている木地師のこと。山中という土地柄。どんな環境でどんな体制で作られているか。いかにこのぐい呑みが良心的なものか。安心して推薦できるのはなぜか。30年この人の器を使っていたおばあさんが、修理に出したときのエピソード。どこがどんな風に傷むのか。その修理の簡単ではないこと。それを要明さんがどのように引き受け、処理したか。続いて漆器や漆のことに話が及ぶ。日本の漆と中国の漆の違い。値段の差はどこからくるか。椀の漆器は、どこを見ればよいか。漆器の特質、扱い方。そして、このぐい呑みの経年変化について。何年ぐらいでどう変わるか。
話が始まって5分ぐらい経ったところで、もう、溜のぐい呑みを買うつもりになっていた。Iさんはすかさず、「ここに飾ってあるものは、空気に触れて幾分明るく変化しています。ストックはもう少し暗めです。何点かある中からお選びいただけますよ」という。「では、お願いします」、とすんなり応じる。衝動買いしても、大きな後悔をするほど高くはない。いやあ、楽しかった。次から次へと繰り出される、面白い話。デパートでこんないい体験をするとは思わなかった。これは、自分が「美」を意識して買った最初のぐい呑みである。そして私はすっかり要明研二さんのファンになった。
(注:ここの画像は、自分が買ったものとは形も色も異なるものです。)
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コメント (2)
2007/07/30
Himajin 漆のぐい飲みは一般的ではないけれど捨てたものではないですね。角偉三郎さんなどが作ったぐい呑みは野趣もあり力強さも伝わって気に入っています。
溜りのぐい呑み、時間が経つと「空気に触れて幾分明るく変化しています。」とありますが事実でしょうか。家にある溜りの盆とか銘々皿は年月経過とともに黒い方へ変化してきているようです。
2007/07/31
boshita 角偉三郎さんのぐい呑みをお持ちだということでしょうか?どんな感じなのでしょうか。よろしければ関心空間でご紹介ください。
さて、溜の色変化についてですが、デパートで見たところでは、そういわれてみれば何となくというくらいの変化しかありませんでした。しかし、溜という塗りの技法が、朱を下塗りした上で透明の漆を塗ることであることを考えれば、漆の透明度が経年変化で増すにつれて、下地の朱が強くなる、すなわち明るい方へ動くと考えて良いのではないでしょうか。溜の場合、よく見ると縁の部分は他に較べて朱っぽくなっているでしょう?
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