「びげいこう」(つついやすたか)
「美藝公」(筒井康隆)
日本では政治家や官僚の芸術に対する関心は低い。それはビジネスの世界でも「金が余ったら芸術に」という程度に思われていることが少なくない。仕事や生活の中で壁にぶつかった時に、どれだけ音楽や小説、映画に助けられたことだろう。雑踏を歩いたり車窓からの景色を眺めていた時に、耳からの音楽だけでどれだけ嬉しいインスピレーションをもらったことだろう。
これは戦後の日本が映画産業立国として復興していく様を描いた作品。清く正しく素晴らしいスター「美藝公」は民衆から絶大なる人気を得ている。美藝公の新作は常にあらゆる角度から検討された内容で、全国民はもちろん政治家、産業界でも最大の関心事である。もしこの世の中が「映画」でなくて「経済」が中心だったらどんな世界になっていたのだろう、と小説の中で登場人物が尋ねる。新聞社でも経済担当者が幅をきかせて、世の中も数字刻みになるだろうとあらゆる想像をする。皮肉にもそれは私たちが今生きている世界そのものなのだ。パラレル・ワールド。しかし読後に「あーあ」と落胆する感じもない。なんだか美しい人々に出会った後の清々しさのようなものが残る。
だけど、ちょっとうらやましかったり。
「「美藝公」(筒井康隆)」を検索
このキーワードを共有する
-
メイン
つながりキーワード (5)
旅のラゴス
- (結城浩)
短編を積み重ねて描く成長小説。ラゴスという主人公が長い長い旅の中で何かを学び、何かをつかんでいく。はじめは不思議な事件、奇妙な人物を中心に物語が進む。しかし次第に舞台装置は地味になり、しかし...
俗物図鑑
- (sogo)
私の筒井康隆初体験。このときから、想像力の 偉大さ、俗物の偉大さに興味を持つようになりました。 評論家だらけのプロダクション「梁山泊」。ここには、盗聴、横領、放火、出歯亀、麻薬などといった...
「朝のガスパール」
- (べ)
筒井康隆がパソコン通信ASAHIネットなどで読者の意見提案批判悪口罵詈雑言などを「参考」に,1991年から1992年にかけて朝日新聞朝刊に連載した実験的新聞小説。A...
「筒井康隆断筆祭全記録」
- (べ)
1994年4月1日 「言葉狩り」の風潮に抗議して断筆中だった作家・筒井康隆を応援するためのイベント「筒井康隆断筆祭」が,東京は中野サンプラザに満員のファンを集めて行...
「残像に口紅を」
- (べ)
世界からことばが消えてゆく小説。作家は,まず世界から「あ」を消すことからはじめる。もうアヒルもいない亀有もない,朝は来ないし愛もない。しかも作家以外誰もそのことに気...







「筒井康隆断筆祭全記...
「朝のガスパール」
「残像に口紅を」


