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映画『リトル・ダンサー』 二人の少年 二つの世界

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1.少年と父親

この映画は少年と父親の物語だ.
少年と父親,彼らは共に何かと戦っている.

少年は,バレエダンサーになる夢を
認めてくれない父親と戦っている.
彼の父親は「バレエなど男のやるものではない」
と考える古いタイプの人間で,
息子の夢を諦めさせようとする.
父親は少年にとって,いわば押しても引いても
ビクともしない大きな壁だった.
少年は,父親と言う壁を打ち破ろうとするかのように,
実際の壁に体を打ち付けて行く.

父親は,組合のストライキに参加して会社と戦っている.
会社は組合を弾圧し,ストライキを諦めさせようとする.
会社は父親にとって,いわば押しても引いても
ビクともしない大きな壁だった.
父親は,会社と言う壁を打ち破ろうとするかのように,
警備隊のバリケードに体を打ち付けて行く.

つまりここでは
「少年」対「父親」の関係が,
「父親」対「会社」の関係に対応する.

2.少年と,もう一人の少年

この二つの関係は,
それぞれ対照的な結末を迎える.
「少年」対「父親」の関係はハッピーエンドなのだが,
「父親」対「会社」の関係は,よくない形で終わるのだ.
少年は,ダンサーになる訴えを父親に認めてもらえるのだが,
父親は,ストライキの訴えを会社に認めてもらえないのである.

少年と父親,この対照的な二人は,
互いに相反する姿を最後に見せる.
ダンサーとなった少年は,
舞台で上に(↑)跳躍する姿を見せるのだが,
一方で,炭鉱夫だった父親が最後に見せる姿は,
地下の石炭を採掘するため
エレベーターに乗って下に(↓)降りる姿だった.
つまりここでは,
対照的な二つのもの(少年と父親)が
互いに相反している(上と下).

一方で,この映画の中には,
対照的でありながら(互いに相反することなく)
一つに混じり合っているものもある.
例えば,ボクシングとバレエの子供教室.
この映画の中で男らしさの象徴として語られる「ボクシング」と
女らしさの象徴である「バレエ」,
この二つの対照的なものが,
(本来別々の場所で行われるはずのものでありながら)
同じ一つの場所で行われているのである.
つまりここでは,
対照的な二つのものが,互いに相反することなく
一つに混じり合っている.
これは明らかに,少年と父親との関係とは違う.

この映画にはまた,
男と女が混じったようなゲイの少年も登場する.
男性性と女性性,この二つの対照的なものが,
この少年の中では(互いに相反することなく)
一つに混じり合っている.

このゲイの少年は,
バレエのダンサーを目指す少年の友達なのである.
バレエ少年とゲイ少年.
前者の世界では,対照的な二つのものが
互いに相反しているのに対して,
後者の世界では,対照的な二つのものが
(互いに相反することなく)一つに混じり合っている.
そんな二つの世界が,この映画の中にはあるのである!
「少年と父親の物語」はまた,
「少年ともう一人の少年の物語」でもあるのだ.

映画『リトル・ダンサー』 二人の少年 二つの世界

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牛込太郎画像 投稿者:
牛込太郎
  • 2007/08/16登録
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