99人の最終電車
井上夢人(いのうえ・ゆめひと、写真)がウェブ上で公開した、ハイパーテキスト小説。銀座線の最終電車に乗り込んだ99人の乗客の模様がそれぞれの一人称で語られる。詳しいしくみはこちらを参照。
語られる時間は23:56から0:13までのわずか17分だが、何せ登場人物が99人もいて、それぞれがそれぞれのストーリーで動くため、半端でない情報量。とりあえず一人の人物に集中して読み始めてみるものの、途中で気になる別の人物が交差してきて、うっかりそっちの人物のストーリーに飛んでしまうと、やはりその人物の登場から読み直さなければならず、そうしてるうちにまた別の気になる人物が交差してきて、あれ、結局読み始めた時に注目してたのは誰で、どこまで追いかけたんだっけ?となり、さながら青木ヶ原。
一つのエピソードに複数の人物が関わっていることも当然あり、例えば2人が絡んでいるエピソードなら、二つの視点、二つの思いが交錯しているのを見られて面白い。ただ、あんまり大勢が絡みすぎているエピソードをすべての人物の視点からちゃんと追いかけようとすると、また青木ヶ原へ。
というわけで、私は、未だにこれをすべて読んだことがない。時間がいくらあっても足りない。というか、そもそも「すべて読んだ」ことに気付くのか、コレ?
ところでこの小説、徐々に時計が進んでいく(トップページの時計がそれ)というスタイルで、1996年4月に開始された。インターネットの普及が現在とは比べようもない水準だったであろう当時に、ハイパーリンクをフル活用した「多元的一人称小説」という手法は、最先端の発想だったろう。しかし、この手法の構造的帰結として、時間が進むに連れて登場人物が増え、人物同士の交差も加速度的に増えていく。あまりのことに茫然自失となった(←筆者推測)著者の筆は鋼鉄の如き重さとなり、やがてトップページの時計は全く前に進まなくなり、ファンの多くがあきらめの声を漏らすようになった(実際私も、あまりに進まぬ時計に、もはやこの小説の存在をほとんど忘却していた)。奇跡的に完結を迎えたのは、なんと2005年1月。8年8ヶ月……。
これから迎える夜長。ぜひこの「8年8ヶ月の青木ヶ原」へどうぞ。
- 2007/09/19登録
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