テンニンカラクサ
天人唐草
『日出づる処の天子』のような長編も好きなのだが、山岸凉子の真骨頂は、完璧な構成でもって、読む者を容赦なく地獄にたたき落とす短編の方にあるように思う。
厳格な父と古風な母に育てられた響子は、ある時「オオイヌフグリ」という名の花を知る。「どんな意味なの?」と親に尋ねるが、「女の子がそんな言葉を口にするな」とわけのわからないまま怒られて、代わりに「天人唐草」という別名を教えられる。
―なんとまぁ、性的なものからの抑圧ぶりを物語る的確なエピソードじゃありませんか。
慎ましく・女らしく・控えめに…と育てられ、年頃になっても地味な響子。だが、父が真に求めていた女性像が自分に言い聞かせてきたのとはまったく逆のタイプだったと知った時、彼女の精神の崩壊ははじまる…。
初読は高校生の時で、読んだ後、まさに叩きのめされました。山岸凉子の傑作短編は数あれど、私にとっては一番の衝撃作。
この間実家の母が「猫のおちんちん」(←茶花摘みの話)という言葉を連発するのを聞いて、健全な家庭に育って良かったよ、とシミジミ思ってしまった。「猫のおちんちん」って、ネットで検索しても本物の猫のおちんちんの話しか出てこないところを見ると、母の言う「猫のおちんちん」=「オオイヌフグリ」なのかなぁ(野草に疎いのです…)。
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