Tata Nano 「10万ルピーカー」 (クルマ)
※「もうひとつの10万ルピーカー」 、Bajaj Liteはこちら
ちまたで話題の「10万ルピーカー(09年3月現在19万円くらい)」。Made in India。
インド最大のタタ財閥(他には世界最大の紅茶メーカーであるタタ・ティーや、世界大手のタタ・スティールなど) の中核企業にして、FordからJaguarやLand Roverの買収に成功した(とは言ってもいきなりキャッシュ不足に悩まされている)インド資本最大の自動車メーカーであるタタ・モータースが威信をかけて送り出す『1 lakh Car(10万ルピー=18万円の車)』。08年1月9日のDelhi Auto Expoでワールドプレミアを迎え、世界中のメディアの注目を集めた世界最廉価自動車が、09年4月いよいよ発売開始となった。09年5月時点で、実際の価格は13万ルピーくらいから。
インド英語で"1 lakh"は"10万"なので、10万ルピー。今は1ルピーが1.9円くらいなので、19万円。(日本語だと「19万円カー」。英語だと「$2000 Car」という記述が多い。)
19万円のクルマ?と言われてピンと来ないあなた、まともです。二年くらい前、財閥総帥のラタン・タタが「インド人のインド人によるインド人のためのクルマ=『People's Car』(国民車)」として『1 lakh Car』構想を発表したときの反応は実に冷たいモノだった。欧米・日系メーカーはほとんどスルー、当のインド人ですら「絶対無理」「オート四輪じゃないの?」「どうせ人気取りのパフォーマンスだけ」とネガティブ意見のオンパレードだった。
しかし、タタは諦めなかった。先進国のメーカーに冷めた目で見られようが、財閥の金を無駄遣いしていると地元のメディアに揶揄されようが、ひたすら頑張った。で、どうやら本当に作ってしまった。
何というか、ホンダばりのPower of Dreamsである。(実際、財閥総帥のラタン・タタは、彼個人の夢のプロジェクトであると語っている)
以下が、徐々に明らかになってきた『Tata Nano』のスペック。スズキの鈴木修会長に「1 lakh car実現は無理」といった主旨の発言をされたことがよっぽどタタ氏の癇に障ったらしく、Nanoの発表会でわざわざその発言を引用して溜飲を下げた。
焦点となった価格も、スタンダードとデラックスの二バージョンに分けることによって、下位モデルの仕様を徹底的に簡略化、それによって(無理矢理)「1 lakh Car※」を実現した模様。
日本のメディア等でよく言われる「片側ドアミラーやワイパー一本」というのは、あくまで表層的な例えであり、全てのコスト、なかでも「見えない」部分のコストを大幅に(多くは安全性を犠牲にして、信じられないくらい)圧縮して超低価格を実現している。逆に言えば、外観はかなりこだわったポイントで、タタ氏自らがデザインを絞り込み、「最も先進的なモノ」を採用したという。
※ただし、この安さを実現するためには、工場誘致のためにウェストベンガル州政府が行った優遇措置(補助金、法人税控除、土地の実質無償提供)が不可欠であるとのこと。(forbesによると一台当たり、15%から18%が補助金との試算)・・・ちなみにこの工場からは撤退したが、新工場であるグジャラート州政府との密約の噂も絶えない。上記をふまえても、採算ラインが年産百万台程度という超薄利多売の製品のため、数年間は利益が出ない見込み。
【Tata Nano "1lakh Car(ワンラックカー)"】
(標準グレード"NANO"、中級グレード"NANO CX"、上級グレード"NANO LX"の3グレード構成)
[基本仕様]
・形式:A1セグメント(欧州ではアンダーAセグメント)
・シート:4シーター
※5人定員という説と4人定員という説があるが、どっちにしてもインド人が守るわけがない。
・ドア:4ドア(リアゲートはないので、後ろは開かない)
・最高速度:105km(ただし、ベアリングが耐えられるのは75kmまでらしい)
・燃費:20km/l程度との公式発表
・本体色:Racing Red、Ivory White、Summer Blue(NANO、CXのみ)、Sunshine Yellow(LX専用色)、Champagne Gold、Lunar Silver(CXとLXのみ)
[諸元]
・全長: 3099mm
・全高: 1652mm
・全幅: 1495mm
※全長が30cm短い以外は三菱iとほぼ同サイズ。長さだけならば、スマート・フォーツー、トヨタのiQの方が短い。
・地上高:180mm
・最小展開半径:4m
・燃料タンク容量:15L
・車重:600kg(NANO)、615kg(CX)、635kg(LX)
・最大積載量:300kg
・エンジン:二気筒624ccのガソリンエンジンをRRで搭載
・出力:33馬力@5250rpm
・トルク:48 NM @ 3000 +/-500 rpm
・トランスミッション:4速MT(上級グレードはCVTとの情報)
・タイヤ:(フロント)135/70 R12、(リア)155/65 R12
[上位グレードのみの仕様]
・ホイールキャップ(LXのみ)
・ボディ同色バンパー・ドアハンドル(LXのみ)
・温度調節機能無しエアコン(CX、LXのみ)
・前席パワーウィンドウ(LXのみ)
・運転席のリクライニング機能(CX、LXのみ)
・助手席のスライド機能(CX、LXのみ)
・繊維シート(LXのみ、下位はビニール製)
・色つきガラス(CX、LXのみ)
・フォグランプ(LXのみ)
・ブレーキブーストアシスト(CX、LXのみ)
・ラジオ
・パワーステアリング
・タコメーター
[省かれている仕様]
・ワイパーは一本のみ
・ホイールボルトは三本
・ABS
・エアバッグ
・リアデフォッガ
・助手席側のドアミラー
※コスト削減とか書いてある記事が多いが、当たらずとも遠からず。インドでは100万円以上する車でも左のドアミラーは付けてない車が多く、とりたたて話題にするほどのことでもない。なぜかというと「どうせ使わない(バックミラーしか見ない)し、あればあったですり抜けがしにくい」から。(側方感覚だけならば、インド人ドライバーはラリー選手並みである。)
[その他]
・最高速度は105km/hだが、ベアリングが75km/h以上耐えられない仕様(笑)らしい。
※写真はDelhi Auto Expo 2008でのワールドプレミア画像
[公式サイト]
nano
※Firefoxで見るとエンコードでエラー出まくりだった公式サイトも、ようやく落ち着いてきた模様。インドにしてはメチャクチャオシャレ。Tataのやる気が感じられる。
[所感とか]
・つまり徹底した「引き算」エンジニアリングで作られた車。人命が相対的に安い、つまり守るべきモノが少ないインドだからこそ出来た、そういう意味ではエポックメイキングだと思う。ただし、世界の多くの国では「足し算」によるクルマが求められるのも事実。
だからというわけじゃないけど、ダイハツ・エッセ、68万3000円も十分すごいと思うんだけどなぁ。。。エアコンもパワステもABSもエアバッグもパワーウィンドウも標準で付いてるんだよ。100km以上で普通に走るし。何より世界のトヨタ品質だから故障しない。日本は今こそ軽自動車の規格を変えて世界で勝負すべき。ミニマルデザイン
は日本のお家芸だし、勝てると思うよ。
・Nanoは日本車にとっての直接の脅威ではないです。Nanoは日本車と同じフィールドで勝負しないし、する気もない。日本車にとって本当の脅威となるのは「足し算」エンジニアリングで作られている廉価車。具体的には、コピー期間をほぼ終了して、急速に品質を上げてきている中国車でしょう。
・インドに関してはマスコミが良いことしか言わないので→インド雑感
■09/5/7更新
なんか、中途半端で悔しいので最新のカタログスペックを可能な限り掲載。
■09/5/6更新
ちょっと更新。いきなり、Yahoo!のトップでも報道されたけど(「超低価格車『ナノ』20万台の注文殺到、抽選販売へ」)、これは印象操作だね。だって、Nanoは100万台超で採算が取れるクルマなんだから、20万台じゃ全然足りないわけです。で、今はマザー工場が稼働してないから、生産能力は不足。で、品薄感を煽る表現で「抽選販売」なんでしょ?個人的には「金融会社とタイアップして新規にローン作ったりとか、バンバン宣伝してる割には、ほとんどの潜在顧客は様子見なんだなぁ」と思ったんだけど。。。
繰り返しますが、Nanoの客層と、他のクルマ、特に日系メーカーのクルマとはかぶりません。まぁ、お手並み拝見かと。
■09/4/2更新
発売されたので、それに併せて内容を更新。低価格、低価格と騒ぐマスコミに言いたいんだけど、「安全を犠牲にしている」ということをもっと書くべき。そういう意味では邪道なクルマ。ただし、それを求めている市場もあるという認識は必要だけど。。。
■09/2/28更新
いよいよ、四月発売の模様。この記事には、M800とかAltoが競争にさらされるって書いてあるけど、価格が倍違うんだよね。実際には選択肢になるのは、M800の「中古車」なんですよ。Altoなんか論外。
Nano買う人たちはほとんどフルで信用枠使ってローン組むわけだから、二倍のレンジはさすがに比較対象外だと思うんだけど。実際、Marutiも競合説は否定してるし。インド自動車市場の底上げにはなるけど、既存工場の生産だけだとアナウンス効果くらいしかないんでは?Tataの主力小型車のIndica Vistaより少ない量じゃ話にならんでしょう。
■09/02/09更新
Tata財閥創業者の誕生日にちなんで、3月3日発売か?という情報も。英語の記事はこちら。
■08/11/6更新
結局工場は西部Gujarat州に新設(最初からこっちにしておけば、、、)して、できあがるまで他の工場で生産。発売は来年第一四半期に延期、だそうです。
■08/10/05更新
ついに、Singur工場、ひいてはWest Bengalから撤退とのこと。インドの民主政治は衆愚政治と紙一重とはいえ、アホですな州政府。Tataは10月発売を強行するつもりらしいけど、どうなることやら。。。
■08/09/05更新
Nanoのマザー工場として建設されているWest Bengal州のSingurで土地収用に対する抗議行動が激化。タタはNanoの発売延期を結滞したとのこと。
いつもどおり、というかインドではお約束の「党争」。同州政府はインドでは唯一の共産党政権。にもかかわらず、共産党が大企業の工場誘致を推進し、野党のヒンドゥー至上主義政党(BJP)がプロ市民ならぬ、農民を駆り立ててデモをやらす、という。まぁ、インドらしいです。
■08/1/21更新
最新のスペックを反映ほか記述を修正。
■08/1/24更新
低価格の秘密(州政府からの補助金)を記載。
■08/1/28更新
マスコミ等での記述が統一されてきたため「30万円カー」から「28万円カー」に変更。
■08/2/24更新
ついに、10月発売が決定した模様。
■08/3/29更新
最新情報に更新
- 価格: 130,000ルピーくらいから
- メーカー: Tata Motors
- 年(代): 2009
- 地域: インド
- 2009/05/07更新
- 2007/10/23登録
- 33269クリック
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コメント (21)
最新コメント5件
2008/04/07
ジョセジョセ このときのタタは両サイドミラーがない。どうもドライバーさんは感覚とバックミラーですり抜けているみたいでした。
昔 ガンダムで”装甲越しに殺気を感じるんだ”とライラ・ミライさんはジュリドに教えていましたが、まさしくその通り。
インド人ドライバーはみな ニュータイプかいなと。
2009/02/10
Fallout Business Weekは苦戦を予想してますね(記事は和訳)。価格が中途半端になってしまった、安全面も含めて装備が不安、といった内容です。
zeek21 Fallloutさん>僕は既存のオートバイユーザーに対してはかなり訴求できる商品だと思っています。クルマとしては苦しいですが、タタ氏の言うとおり「オートバイよりは安全で快適」なので。。。で、販売面ではそこそこ売れるんじゃないですかね。ただ、厳しいのは経営面でしょう。意味不明の工場移転による発売遅延が発生したため、サプライヤへの補償が必要になり、背伸びをして買っちゃったジャガー&
ランドローバーはかなりの重荷になってます。
2009/02/27
雲衣。 それにしても現在の為替で20万円をきる超低価格!! 中国人やパキスタン人も欲しがるだろうし、、。いよいよ地球温暖化エンジンにスーパーチャージャーが作動しました。。
zeek21 いいのか悪いのかわかりませんが、2010年くらいにマザー工場が稼働するまでは、ほとんどNanoは供給されないはずです。その頃は先進国で続々と電気自動車がデビューしてるでしょう。ただ、環境負荷が最悪な電池の問題は放置されたままですけど。。。
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