マニック・ストリート・プリチャ-ズ / ザ・ホーリー・バイブル
Manic Street Preachers / The Holy Bible
94年作品。UKパンクの意思を本質的に継いでいる稀な存在、マニックスのサードアルバム。このアルバムが抱えているなんともいえないわだかまり感が、リッチー・ジェイムス(g)の疾走を招いたのだろうか?今となって聴いてみるとこのアルバムの毒の部分はかなり彼らの作品中でも独特の雰囲気を放っている。
マニック・ストリート・プリーチャーズは89年、デビュー・シングル「Suicide Alley」でマンチェスターを中心としたダンス・バンド・ブームの真っ直中に登場した。パンクの意思を継ぎ、現代的メッセージをパブリック・エナミ-から学んだという彼らは「Motown Junk」や「You Love Us」といった一連のシングルを発表した後、コロンビアと契約してダブル・アルバム『Generation Terrorists』を発表。「1stアルバムを世界中でNo.1にして解散する」という件の解散宣言及び撤回はあまりにも有名で、彼らはゴシップと共に一躍脚光を浴びた。結局アルバムは1位にはならず、バンドも存続するという彼らの美学からは全くかけ離れた結果を生み出すが、その反動からか2nd『Gold Against The Soul』での音楽的成長は目覚しいものがあった。しかし、彼らの視点はますます冷ややかになっており、内向的な思考が強まっていた。
今作はさらにその作品を深化させた、うっすらと鈍い光を放つ作品である。作品感が分裂気味であるにもかかわらず、曲の研ぎ澄まされたセンスにぼんやり包まれており、ところどころにある辛らつな歌詞が僕らに突き刺ささる。抑圧に対する抵抗から生まれた彼らが、その状況を厳しく揶揄するかのようなそんな感じだった。このアルバムはそんな問題を多分に含んでいた。だが、このミュージックの違和感こそがマニックスであり、彼らは益々その特徴をはっきりさせたのだ、と僕は思った。
しかし、その後すぐにリッチ-はいなくなった。アイ・ラヴ・ユーの書置きを残し、警察の必死の捜索もむなしく、彼が見つかることはなかったのだ。残されたジェームス・ディーン・ブラッドフィールド (vo&key)ニッキー・ワイヤー (b&vo&g)シーン・ムーア (ds)はその危機を、非常な苦難と共に乗り越え、バンドを3人体制で再開。素晴らしい楽曲と政治への反発をもってリスナーを感動させ、念願のUKチャート1位をもぎ取った。苦境に潰されず、自分達の姿勢を示した彼らは偉大であり、彼らのみが知った経験が彼らを新しいバンドサウンドへと昇華させたのだ。
ナンバー1バンドになった今だからこそ、僕はこのアルバムを聴いてもらいたいと思っている。ジレンマの中で必死にもがき、去ったものと、残ったもの。そして、それが双方ぎりぎりのレベルで凌ぎあっていた初期マニックス最後の姿は聴かなければならないのだ。それは、様々な感情の吹き溜まりがアルバムに込められているからであり、サウンドプロダクトがどうとかいうレベル以外でマニックスという魅力を感じることができうるアルバムだと僕は思うからだ。
僕はたまに、ふとどこか遠くへ逃げてしまいたい衝動に駆られながらも、今を生き抜いていれば何かはじまることがあるんじゃないかと思いなおして、今日も動きつづけている。マニックスの聖書(バイブル)を聴きながら、僕は今日も踏みとどまることができている気さえする。僕はまた音楽に救われたわけだ。
そして、現在リリースされている『ノウ・ユア・エネミー』は彼らが自らの本質を問いただそうとしている原点を超えるべく作られたアルバムだ。そう、マニックスが起こす革命はどうやらこれからやっと本格的に始まることができたようだ。
- 価格: 1700円
- メーカー: ソニー・ミュージック
- 年(代): 1994年
- 団体名: マニック・ストリート・プリチャ-ズ
- 2002/06/24更新
- 2002/06/24登録
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