ミヤケジュン
三宅純 / Stolen from strangers
ゾクゾクした。。。僕の中ではsusumu yokota以来の衝撃。三宅純。こんな日本人がいたとは!ジャズもボッサもエレクトロニクスも現代音楽も飲み込む、素晴らしすぎるセンス。世界に誇れる音楽家ではないでしょうか。リーダー作としては7年ぶりという本作『Stolen from Strangers』は、制作に5年をかけ自ら立ち上げたレーベル“drApe”からリリース。
幕開けはアート・リンゼイがボーカルを執るボサノヴァ調のナンバー。しかしこの密度の濃さはどういうことだろう。音の鳴り方は至極さり気ないものなのだが、ひとつひとつの音がじりじりと絡み付くように妖しく、ひりひりと焼け付くような温度を孕んでいる。曲調はボサノヴァなのに全くリラックスできない!そわそわする。この得体の知れない妖しさこそが本作の魅力の神髄にあると思う。この人は狂気を知っている。またそれを俯瞰する冷静な眼を持っている。すなわち優れた芸術家でありデザイナーであり演出家であり演者である。このアルバムが織りなす異様な緊張感は、狂気と紙一重の研ぎ澄まされた感性が成し得るものだ。だからこそひとつひとつの音が芸術的で、儚くも美しい。
前述したアート・リンゼイの他にもアルチュール・アッシュ、サンセヴェリーノ、ヴィニシウス・カントゥアリア、ピーター・シェラー、ブルガリアン・ヴォイスなど様々なゲストを迎えて、映画音楽のようなナンバーから昭和歌謡風のものまで、バラエティに富んだ曲が集まっている。一分の隙も無いハイブリッドな完成度は圧倒的なまでの緊張感を生み、そのどれもが妖しく魅力的であり、アルバムを聴き終えた時に残るのは濃密な余韻。
流麗なメロディに心を癒されたり、躍動するリズムに身を任せたり、歌詞に自分を投影させたりと、音楽の聴き方・楽しみ方には様々なアプローチがあると思うが、本作に於ける快感は“芸術に触れる喜び”だと思う。
ところで僕は知らなかったのだけれども、三宅氏はこれまで数多くの(2500作を越えるとか)テレビCM曲を手がけたそうで、CM音楽界では有名な存在らしい。しかし、国内での認知度がどの程度なのかわからないが、少なくともアーティストとしての三宅純(Jun Miyake)が音楽好きの間できちんと評価されているとは言い難いのではないかと思う。こちらの記事で三宅氏自身が語っているように、日本の音楽業界(音楽に限らずだけど)が経済性だけを重視する退屈なものになっているという意見に烈しく同意する。アメリカ型の経済至上主義を見習うことで戦後の日本は発展してきたわけで、それはそれで在っていいと思うけれども、只それだけに一極化するのはどうかと。もっとこう、異なるモノが済み分けの出来得る社会でなければ、息苦しくてしょうがない。そういう意味ではヨーロッパの文化レベルの高さというものは、社会の許容量の広さ・懐の深さなんだなあと思う。
三宅氏のような優れた音楽家をきちんと評価できない国は先行きが不安だ。芸術を理解する土壌は文化の土壌であり生活の土壌となる。正解はひとつでは無いということに気づかない限りこの国に未来は無いと思う。劣化の著しいテレビに蔓延るただ喧しいだけの垂れ流しCMを三宅氏はどう見るだろうか。
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- 2009/04/30更新
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Jun Miyake / Stolen from Strangers
- SINGSTYRO*musicblog | Tracked: 09.5.7 11:38 am
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