東京に原発を 広瀬隆
原発反対派として有名な広瀬隆氏の著。原発の危険性を強く訴えている。地雷のような本なので、原子力産業関係者には忌み嫌われている本だが、原発のことをよく考える際にはバイブルとなりうると思う。1986年の著作。今読んでも、テンポよく事実を積み重ねていく論法には説得力がある。
原発が多い国は、米国、ロシア、フランス、日本の順。スリーマイル島、チェルノブリ、東海村、柏崎とフランス以外はこの順で事故が起きているのは、必然か。人間からシステムですべてミスを排除できるという主張には、無理があることをこの事実は示しているのではないだろうか。
以下、この本で指摘している点を少しあげてみると
0. 原発廃棄物の安全な処理法は、現在見つかっていないし、その可能性はほとんどない。再処理工場に工場という名称を用いるのはごまかしである。日本の原発は暴走している。
1. スリーマイル島原発事故のあと、周辺の地域で新生児死亡が同心円状に増加したことが、疫学的には明らかだが、放射能の影響は10年、20年という時間が経って現れるので、直接の因果関係の証明が困難であること。しかも、その調査をするのも、依頼者が原発関係者ということがほとんどで、悪いデータは隠すといった強いバイアスがかかる。
2. 原子力安全委員会の構成員の問題—推進派や関係者ばかりであること、知識人の代表と一般には考えられている学士院、学術会議なども日本原子力会議と深い関係にある(ここのことかhttp://www.jaif.or.jp/)。
3. 東京電力社債は原発用の資金集めであり、しかも、電力事業法により保証されているので、原発の建築費がどんどんあがったとしても、一般人からの資金で対応できるようなしくみになっている(この関連かhttp://blog.livedoor.jp/kawase_oh/...)。
4. 温排水が環境破壊になり、魚類の汚染、地球温暖化にも影響すること(こういった意見を気にしての改ざんか http://www.tepco.co.jp/cc/press/...)。これを都市などの暖房につかえるとする「原子力コジェネレーション」。コジェネレーション自体は、電力会社のライバルであるガス会社の専売特許で、東京ドームなどで有名だが、都心に原発をつくってこれをやろうというのは都市住居者からの反対があり現実的には無理だろう。しかし、小型原発を日本中につくるという計画もある(あった?)ようだ(これが本当だとすると大きな論点だろう)。
5. 漁村、農村を都市の犠牲にする姿勢。危険だから事故がおこった場合、被害者数の多い都市はだめ。東京の地盤が原発に耐えないというのは、根拠がない。柏崎はもっと悪い。
6, 日本では、大地震とともに危険が訪れるー今回の柏崎の問題とも関連するが、安全装置は地震でパイプが折れることがあり、もともと電気が供給されないと働かないシステムである。
7. ウラン鉱山周辺では、大変な公害が発生し、特に露天掘りをしている鉱山では、そこを中心に同心円状に発癌率の増加が認められた。(米国)
8. 原発自体は20-50年しかもたないのに、その後使えなくなった原発発、廃棄物を1000年も管理しつつけるという負の遺産を後世におしつけることをまぬかれない。
9. 原発が運転されている地域では、ほとんどの住民が不安を抱き、しばしば恐怖心におそわれながら、それを口にすることによって地場産業が殺されるのを恐れ、自分一人の胸に包んでいる.
このように、反論の余地がないような話ばかりで、気が重くなる。やはり原子力はパンドラの箱か。巻末の野坂昭如氏のコメントのように、”無知は罪”だ。
きょうから、省エネにはげまないといけない。
できれば、さらに悪化していると思われる現在の状況にあわせた改訂版を望みたい。
日本人名大辞典より
広瀬隆
1943‐
昭和後期-平成時代のノンフィクション作家。
昭和18年1月24日生まれ。医学書の翻訳にたずさわりながら,反原発運動にとりくむ。昭和56年「東京に原発を!」で注目される。つづいて「ジョン・ウェインはなぜ死んだか」「危険な話」など,資料を駆使して事実にせまる作品を発表し,原発論争をまきおこした。東京出身。早大卒。著作はほかに『赤い楯』など。
http://ja.wikipedia.org/wiki/...(%E4%BD%9C%E5%AE%B6)
最近、マスコミの露出が少ないような気がするが、これも業界からの圧力だろうか。
その他関連サイト
http://d.hatena.ne.jp/Dr-Seton/...
- 2007/11/28更新
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