ビジュツシ
「美術史を語る言葉―22の理論と実践」
原題
Critical Terms for Art History
The University of Chicago Press
Chicago, Illinois, U.S.A 1996
第1部 イメージのさまざまな働き
1 表象 デイヴィッド・サマーズ
2 記号 アレックス・ポッツ
3 シミュラークル マイケル・カミール
第2部 さまざまなコミュニケーション
4 言葉とイメージ W・J・T・ミッチェル
5 物語 ヴォルガング・ケンプ
6 コンテクスト ポール・マティック・Jr
7 意味/解釈 スティーヴン・バン
第3部 さまざまな歴史
8 オリジナリティ リチャード・シフ
9 転用 ロバート・S・ネルソン
10 美術史 ディヴィッド・キャリア
11 モダニズム チャールズ・ハリソン
12 アヴァンギャルド アン・ギブソン
13 プリミティブ マーク・アントリフ/パトリシア・レイトン
第4部 さまざまな社会関係
14 儀礼 スザンヌ・プレストン・ブライア
15 フェティッシュ ウィリアム・ピーツ
16 眼差し マーガレット・オーリン
17 ジェンダー ホイットニー・デイヴィス
第5部 さまざまな社会
18 生産様式 テリー・スミス
19 商品 ポール・ウッド
20 収集する/ミュージアム ドナルド・プレツィオージ
21 価値 ジョーゼフ・レオ・ケーナー/リーベスト・ケーナー
22 ポストモダニズム/ポスト・コロニアリズム ホミ・K・バーバ
以上の22の概念(キーワード?)から成る。
それぞれの概念はこれからの美術史研究の重要な部分を占めるだろうけど…
今の私には関係ないかも。
でも、けっこう面白かった。
よって、面白かった部分を抜書き。
2 記号
p.54
芸術作品は、単に芸術であると認識されることによって、記号として機能している。そして、その意味をより正確に詳しく説明しようとするためには、意味を持つ特徴を解釈するために観者が引き出してくる諸コードや習慣に依存することになる。かつて群集の作品解読を可能にしていたが、しかし現代の観者が直接に知ることはない過去の文化内に働いていた習慣を、よりいっそう正確に理解し、提供しようとする試みに、美術史学はおおいなる関心を抱いている。
4 言葉とイメージ
p.101
『言葉とイメージ』が現代の美術史において強い関心を惹く話題となってきたのは、しばしば文学理論による視覚芸術への侵入として見なされているものと、おおいに関係がある。ノーマン・ブライソン、ミーケ・バール、マイケル・フリード、ウェンディー・スタイナーやその他大勢の研究者たちがあちこちで文学の領域から美術史へと越境してきた。こうした研究者たちは主として、テキスト研究において練り上げられた方法や用語を持ちこんでいる。それには記号論、構造言語学、グラマトロジー、言説分析、言語行為論、修辞学、物語論などがある。
6 コンテクスト
p.141
美術のマーケットとは、芸術家、収集家、業者、批評家、学芸員、そして公的諸機関を結ぶ関係のネットワークのことだが、その美術のマーケットが広大なコンテクストを構成するようになる。このコンテクストは、どの時点の流行にも果敢に反抗するという姿勢の元で制作された作品との関係の中でさえも、決定的な役割を果たす。通時的側面でこのマーケットに相当するのが、美術史である。
p.143
美術館は、驚嘆すべき品々の集積であると同時に、それらの間の関係付けを表象化するものである。そして、この関係付けは、過去の参照がここでの芸術の実践の基本になる以上、必然的に歴史学的なものになる。美術館に収められるものが取ってこられた元の前近代のコンテクストは均質なものではない。その不均質さが、美術館では、組織化のカテゴリー、よくあるものでいえば、国籍や「流派」や時代などに従って再登場する。
9 転用
p.230
19世紀前半のイギリス美術と文学における田園風景の転用について、エリザベス・ヘルシンガー が考察しているが、その探求は、風景画を集合体としてとらえる方向へ、また競合し葛藤しあう私有の場として風景画の意味を捉えようとする方向へ移っている。風景画を『本質的にイギリス的』なものと考えるなら、風景画とはまさにイギリス的なるものを、つまり国民意識を立証する手段に他ならない。このように風景画とは、少なくとも富裕層にとっての理想的な社会関係を描き出す
だけでなく、中産階級とアッパーミドルにとっても想像の共同体を描き出すものである。しかしこのような自然のイメージを通して、国民を定義することは、それが自然なイメージとして受け取られる以上、意図出来であるにせよ、ないにせよ、そこに登場しない人々と空間を排除することである。ヨーロッパやアメリカにおいて風景画は、近代の国民国家を形成し、その国家の土地を象徴的に所有する数多くの戦略の一つであり続けてきた。このような所有は一世代ごとに再確認されなくてはならない。そしてこの過程で重要な働きをするのは、それが風景画、写真、映画、地図、あるいは高速道路の標識のいずれであるにせよ、視覚的記号なのだ。常に企てられることは、その政体がある領土を所有するという人為的で束の間の事柄を、自然で永久的なものに見せようとすることなのである。
☆これなんか、土門拳とか入江泰吉なんかの「大和イメージ」の分析に使えそう、なんて思ってしまう。
13 プリミティヴ
p.331
したがって「プリミティブ」という用語は、良い意味に使われても軽蔑的に使われても、政治的カテゴリーであることは避けられない。民族的文化的差異を根拠として人種的優越性を主張する態度は歴史上ずっと続いてきたのではあるが、コロンブスのアメリカ大陸「発見」とともに始まる植民地時代には論点ははっきりと権力の問題に絞られている。本章ではプリミティヴの概念を明確にするためにバラバラに扱おうとしたけれども、これまで見てきたように、この概念は時間/空間、ジェンダー、人種、階級の問題に分かちがたく関係している。こうした問題に関わる仕事の大部分はこれまで人類学、歴史学、文学批評、カルチュラル・スタディーズの分野でなされているけれども、これらの社会的知的体系は芸術文化に自覚的にまた無自覚的に関わっているのであり、その関わり方は美術史という分野において重要性を増してきている。
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