セイチヘ
聖地へ Light&Shadow
この本をくれたひとに、私には屋久島の血が流れているんだよって言ったことがあっただろうか。
まずはじめにそこに驚いた。
うん、たぶん言ったのかもしれない。
けれどこの本を選んでくれたのはそこから辿り着いたのではないような気がする。
深い苔やまっすぐに水にうつりおちてゆく細い杉の木立ち、
霧にいぶされた土からたちのぼるあたたかいかおり、どこかで枝が落ちる音。
根がすいあげる水のおと、ぎりぎりと擦れ合い割れる幹の乾いたひびき。
一度も訪ねたことのないところなのに、ここにはなにかがとくとくと流れている。
大きな樹にまきついて耳をつけて、きいてみたい。
指先がなじむまで。
ほおがしっとりと濡れてくるまで。
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