さんにんよれば詩人
詩集 「三人」 金子光晴 森三千代 森 乾
文学界の先祖帰り(アンモナイト)と言われていた(本当か)詩人金子光晴が太平洋戦争中の山中湖畔で書いた原稿が出て来たらしい。これは全集には入ってないのか、まだ良くわからんがとりあえずエントリしておく。
書籍情報
アンド終戦直後の様子を引用しておく。これは全集からとってきたと思った。金子光晴の全集は買いたい。おもしろいから
***
富士吉田まで行った女連中がかえってくると、吉田の町が粛然としていて、ふだんと様子がちがうので、きいてみると終戦とわかった。天皇のかなしげな声がラジオできこえたといった。河野の家からもそのことを知らせにきた。
僕らは、蓄音機でセントルイス・ブルースをかけて、驚喜のあまり踊りまわった。なにごとかと、宿屋の人たちがのぞきにきた。
村人たちは頑迷で、なかなか敗戦の事実が信じられない様子だった。山中湖に毎年来ていた、アテネ・フランセの校長のコット氏が、病気になって疎開してきたときも、わずかに僕らの助言で、旅館の部屋に受け入れた。病勢が悪化しそうなので、河口湖の病院に入れることになったが、身元引受人がいない。異国で病む寂しさを知っている僕らが、すすんで引受人になって、河口湖へ送りこんだ。幸いにコット氏は病気をもち直して、終戦後まで生き延びた。
ミズーリ号甲板上の降伏調印があり、いよいよ米軍の上陸となると、東京を戦場として、市民たちの最後の竹槍の決死隊が繰り出されるという噂が、甲州までもきこえてきた。実際、そんなことになりそうな日本人の昨日までの気組が、現実としては、いつかぬけ殻になった。他愛ない、いいわけだけのものになりはてていたのだ。
「まんまと一杯ひっかかった」そんな言葉が、自棄的な笑いといっしょに誰の口からもきかれた。
「そんなことわかりきっていたろうに。なにを言うのか」
と、僕は耳をふさぎたい気持ちだった。
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今NHKで朗読やってた(1/20)
- 2008/01/20更新
- 2008/01/16登録
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