ルー・リード / ベルリン
Lou Reed / Berlin
73年作品。ルー・リードの長いキャリアの中で最も陰鬱で希望のないアルバム。当時の音楽評論家は(一部の雑誌を除いて)このアルバムを「最低」と評し、彼の天邪鬼を呪い、激怒した。だが、現在ルー・リード初期の最高傑作とすることに異議を唱えるものはいないだろう。
このアルバムの前作にあたる『トランスフォーマー』は新世代のロックンロール・スターとしてのルーを世界が確認した瞬間だった。協力したデヴィッド・ボウイは彼のポップセンスを純粋培養させ、これまでのウォーホール的なアート感覚に加味したような洒落た印象を多くのリスナーに与えた。結果、イギリスのみではなくアメリカでもこのアルバムは大ヒットを記録し、”ワイルドサイドを歩け”というキャッチ-なシングルとともに、彼はスターダムへの階段を上りだしたのだ。
レコード会社は当然「ワイルドサイド~」の続編に期待した。ところが、だ。出来上がった次のレコードでは、前作の全てが捨て去られ、変わりにドラッグや死やセックスを赤裸々に語った、殺伐とした世界観を歌うルーの姿しかなかったのだ。”オージム”をはじめとする苦悩と混乱の話が、やがて絶望の感覚を皆に植え付けていく。なんの飾りつけもない、なんの精神開放もない、破滅への暗い道がそこにはあった。
彼のこういった感傷的洞察(しかもかなり冷めた感じの)はロックというミュージックが生まれてから、ひょっとしてはじめてのものだったのではないだろうか?だからこそ人は違和感を訴え、反発し、これを認めたくない衝動に駆られた。だが、ゆっくりと時間をかけて彼の言葉は心に入り込み、いつしか悲しみとともに、彼が訴えたい歎きとアンチテーゼに気が付いたとき、このアルバムのとてつもないコンセプトをやっと見ることができたのだ。
ボブ・エズリンのシンプルでいて無駄のないサウンドプロダクト。A面のややポップを混ぜたつくりから、B面部分を物語りに仕立て、前半に登場したキャロラインのサッドソングへのバランス感覚。音楽単独でも出口(隙)のないこのアルバムは、今聴いても全く古さを感じさせない。時に奇跡的な現象が音楽には起こるものだ。
ルーは「ここで精神の自殺をした」とコメントした。そして彼は新たなアイデアをこの死の淵から生み出し、ロックンロール・アニマルへと変貌と遂げる。だが、ルーは何度となく精神的な袋小路に迷い込み、その都度、変質的なアルバムを生み出していくというセラピーを繰り返している。だからこそ、ルー・リードは今も尚、新しいものを生み出せるアーティストとして君臨できているのかもしれない。
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